フェラーリ F2004   text & illustration by tw (2004. 1.26 〜 2. 1)


フェラーリの2004年用マシン「F2004」は、1月26日に発表された。
まずノーズ部分については、筆者には微妙な違いにしか観えずまだあまり確信を持てないで居るが、
F2003-GAに比べてノーズの先の方が全体的に丸みをおび、先端がやや薄く、
下面の後方へ向けて持ち上がる区間が手前になっている様に観える。
フロント・ウイングのステーは前後に短くなった模様。


(2004. 1.27)
フロント・ウイング自体は、発表時に装着された物は昨年と同じ物に観え、一年間開発して何も変わらない 事は考え辛い為、後日のテスト走行でF2004の仕様が登場すると思われる。

筆者がこのページで書いた通りに、F2004はテスト走行の開始とともに、発表時とは異なるフロント・ウ イングを装着した。 1月31日に筆者はシェイクダウンの写真を観た。

F2004用のフロント・ウイングは、事前に言われた様な驚くような形ではなく、今迄のフェラーリとは少し 違う程度の形状である。

メイン・ウイングは、ウイング両端下方からウイング下面へ進入する気流を意識した、両端部分が持ち上が ったタイプとなった。
現在フェラーリのチーフデザイナーとテクニカルディレクターのロリー・バーンとロス・ブラウンは、両者 が在籍した1995年のベネトン時代にも同じ様なフロント・ウイング形状を採用した事が有った。

フロント・ウイング下面のスプリッターは写真からは見えず、未装着のタイプかもしれない。
翼端板は、上下方向に内側へS字にカーブしており、こういった形状は以前にも他チームが採用していたが、 ウイング上面の両端の流れが悪そうに思える。
ウイング枚数は、フェラーリが過去にも用いたメインウイング1枚+フラップ2枚の3枚構成。



フロント・サスはアッパーアームだけでなく、プッシュロッドも車体側付け根部分が翼形状で後方へ延長された。
前輪のブレーキキャリパーは今年も一般的な後ろ向きに配置されている。





(上図) 今回新しくなった箇所の一つはバックミラーの位置で、左右へ離して設置された。
これは2002年から2003年のマクラーレンMP4-17/Dと同じアイディア。

(左図) 元々ミラーの部分へは、せっかくの奇麗な空気を流しておいても、ミラー後部で剥離して後方への 気流は乱れてしまうので、それならば前輪の乱流中にミラーを入れてしまい、その直後で、サイドポッドの 上面への絞りでまとめて整流しよう、という考え方であると思われる。
(左図右側) 1997年以降多くのマシンは、バックミラーが起こす乱流を、サイドプロテクター側面を膨らま せる事で気流を絞って整流していたと思われるが、この場合はサイドプロテクター側面の流速が上がってリ フト方向の力が発生してしまう可能性や、リヤ・ウイングへの流れが不利になってしまう可能性が考えられる。

一方、バックミラーを左右に離す手法の場合は、サイドプロテクター側面を膨らませずにリヤ・ウイングへ 気流を導く事が出来る。
但し、サイドプロテクター上面から左右へこぼれる気流に配慮する必要が有る。

今回のF2004のデザインでは、サイドプロテクター側面を膨らみは小さく、サイドプロテクターとエンジン カウル間の溝は、サイドプロテクター頂上部まで高くされた。



 

他に、ミラーを左右に離す手法のメリットは、ミラー本体の前面投影面積を縮小できる事である。
左右に離れたミラーでドライバーが後方を見る為には、ミラーに角度をつける必要がある。



F2004のミラーのステーは、ミラーの横方向へステーを伸ばしてサイドポッド前側の上縁に接続している。
F2003-GAではサイドポッド上面へ、ミラーの後方へステーを伸ばして接続していた。
F2003-GA式の方が空気抵抗が少ないかもしれないが、F2004式はミラーの左右の位置を変更し易くなる。


サイドポッド上面前端は、壁の様に角度がつけられている。
この部分は、前輪からの乱流とバックミラー後方の整流に影響する。

サイドポッド上面の、後方へかけて落ち込みの始まる位置は前方になった。



(F2004発表時に筆者が観る事の出来た写真からはボディ上面しか確認できなかった為、左のイラス トのディフューザーやリヤサス周辺等は筆者の適当なスケッチ。)
 

(上図) そして、F2004の真新しいポイントは、サイドプロテクター後端がアウトレットとされた事である。

サイドプロテクターとエンジンカウル間の溝の高さは、これに関係していると思われる。

筆者はこのアウトレットを考慮しても前述の溝の高さを疑問に思うが、現在の風洞のレベルやフェラーリの 空力技術者の能力を考えれば、これにはきちんとした理由が有ると思われる。


排気管の末端と排気チムニーは、車体内側へ傾斜したデザインとなった。
ルノーR24の排気チムニーは外側へ傾斜させているが、これは両者のボディ上面の空気の流し方の違いである。



ロープを通す穴は、マクラーレン式とはしておらず、従来同様モノコックに穴が貫通している。

排気チムニーの位置は、2003年イタリアGP以降のマクラーレンMP4-17Dの様に車体内側寄りとなり、サイド プロテクターのスリップストリーム内に排気チムニーが入る様な位置となった。
排気チムニーが内側寄りとされた理由は、サイドプロテクター後端をアウトレットとした事が密接に関連す る筈である。

2004年からの新規定に対処するエンジンカウルは、後端が垂直にカットされるデザインとされた。

サイドポッドから生えるフェアリングは、車体内側方向へ傾斜したものとなった。
フェアリングから続く後輪内側のフェンスは、後端の上側が斜めにカットされた形状となった。

コークパネルのカウルは、ディフューザー辺りまで後方へ延長された。
コークパネルの後端は、ラジエーターを通過して乱れたカウル内側の気流と、サイドポッド外側の気流が合 流する場所なので、ここで両者が後方へ向けて上手く流れる必要がある。
カウルが短ければ内部抵抗や表面抵抗が減り、カウルが長ければ空気の流れ方が安定すると思われる。



リヤ・サスのプッシュロッドの車体側は、付け根付近がカウリングされた。

フェラーリは2002年フランスGP以降、センターディフューザーとリヤ・ウイング下段を一体化するデザイン を採用し続けていたが、今回のF2004では両者は別体に戻った。

リヤ・ウイング下段は、流行通り前後方向へ湾曲している。
そのウイング下面は左右がスムーズに繋がっている。

リヤ・ウイングは、フラップ後端の両端が、翼端流を意識して斜めにカットされた形状。

(このページの最新更新:2004. 2. 1



FERRARI F2004 (注:発表値)
エンジンTiop 053
(V10・2997cc・アルミ製シリンダーブロック)
トランスミッションフェラーリ製 セミAT・7速シーケンシャル
デファレンシャルリミテッドスリップ・デフ
エレクトロニクスマグネッティ・マレリ社製
全長4545 mm
全幅1796 mm
全高 959 mm
ホイールベース3050mm
トレッド (F/R)1470 mm/1405mm
重量605 kg(冷却水、オイル、ドライバーを含む)
ホイールBBS製 13インチ(フロント&リア)
タイヤブリヂストン社製


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