フェラーリ F2004M   text & illustration by tw  (2005/ 1/28〜)

昨(2004)年の名車「F2004」を2005年仕様にしたマシンが1月28日にバルセロナでテストされた。
写真は F1 Live.com や、F1Racing.jp 等で参照。

フロントウイングの中央部から、低く前方へウイングを追加したのが特徴。



(注) 下のCGは、筆者が適当に気流のイメージを描いたもので、解析したものではない。
上が普通のフロントウイング。下が今回の新型。ノーズ形状は両者同じとした。
気流の線の色は、青が低速黄緑が通常黄がやや速め赤が高速
流体は、速度が高いと圧力は低く、速度が低いと圧力は高くなる。






通常はメインウイング下の低圧は、前方にある上側の空気を下方へと吸い込む。
この下方への吸い込みをフォワードウイングでフタをして、
メインウイング下の低圧域を下方へ延ばせているのではないだろうか。

フォワードウイングがあると、ノーズに当たる前の気流も変化する。

最も肝心な問題は、重要なコーナリング時の気流で、
メインのフロントウイングの手前にある幅400mmのフォワードウイングが邪魔となっていないかどうか。



このフロント・フォワード・ウイングは厚みが薄く、上下2段で構成され、 左右の垂直な翼端板でフロントのメイン・ウイングにつないでいる。

正面から見ると、追加した上側のウイングは、その後ろにあるメイン・ウイングに合わせる湾曲した形状で、 フロント・メイン・ウイングの前縁フラップの役目をしていると思われる。

下側のウイングはフラットで、翼端板の下端と同じまで低くされている。






(規定でボディワークが許される範囲図)


現在のフェラーリのフロントウイングのフラップは、規定下でまだフラップ面積を拡大できるが、
そうはせずにフォワードウイングを装着して下面を利用する事にした理由は、
一つは、高い位置で大きなフラップとするよりも、地上効果を利用する方が空力効率が優る為。

もう一つは、大きなフラップで気流を高く跳ね上げたくないからだと思う。
フロントウイングで跳ね上げる気流が高い程に、サイドポッド上面以降の気流に影響する。

空力設計のベースが昨(2004)年仕様のマシンを、今(2005)年の規定仕様にするにあたって、
車体上側の気流の都合も理由でフロント・フォワードウイングを使う事にした可能性も思う。

シーズン途中で投入される2005年車は、大きなフロントのフラップを使う前提で開発されているなら、
そのマシンではフォワードウイングは使っていない可能性もあると思う。



その他、
ピットで使用するフロント用ジャッキは、ウイングの左右で持ち上げる形の物が用意された。

フロントウイングは3枚構成のタイプ。フラップの後端は形状が変わった。

翼端板の両端の下側のトンネルが無くなり、フラットな板に戻った。

ノーズコーンも形状を変えた。フロントウイングの空力を変えた為と思われる。
ノーズ先端は厚みがあって太い。
ノーズ下面は新ウイングの気流を迎える為にスラントのカーブが調整し直された様子。



・フロント部以外で新しくなったポイントについて。


サイドプロテクターのパッドの厚さが、新規定に合わせて95mmとなった模様。


フェアリングフィンの外側には翼端板が付けられた。
これは、その下方の新規定で切り取られたフロアパネル(後輪手前下部のエアシール)に関係があるかもしれない。
翼端板を付けたフェアリングフィン下面で、後輪手前下部の気流を上方に吸い出し、
後輪の回転で下方へ押し込まれる空気の圧力を少しでも減らす可能性などが考えられると思う。

新規定で切り取られたフロアパネルの後端は、上へ向けて小さな折り返しがついている。


サイドディフューザー後端の上には大きめのガーニー付き。
ガーニーの全幅はサイドディフューザー両端より少し狭く設置してあり、ガーニーの角は丸い。


リヤウイングの手前に、フォワードウイングが設置された。
形状はややザウバーの物に似ており、中央と両端では迎え角が異なる。


リヤウイングの翼端板は横から見て、後輪の横の辺りは切り取ってある。

アッパーウイング上側の翼端板は、昨年トヨタが始めたスリットを左右3つづつ開けた。
これはアッパーウイング上面の高圧をスリットから外側へ排出して、翼端渦を緩和する目的と思われる。


(ここまでの最終更新:2005/ 1/31


[Rd.1 オーストラリアGP (メルボルン市街地)  3月 4日(金曜)の写真から]

マシンはF2004Mを使用。冬のテストから装着しているフロント・フォワード・ウイングを使用。
一年前のここでフェラーリがミッドウイングを装着した時は、規定一杯の幅600mmだったのに対し、
今年は幅狭タイプとなっている。翼断面は今年もダウンフォース発生型。



[Rd.1 オーストラリアGP (メルボルン市街地)  3月 6日(日曜)の写真から]


土曜の予選1回目が雨となった影響で予選11位となったバリチェロは、10位グリッドのマクラーレン(ライコネン)がスタート出来なかった事から10番目からのスタートとなり、2位でチェッカーを受けた。

土曜の予選1回目が雨となった影響で予選18位となったM.シューマッハは、42周目にウイリアムズ(ハイドフェルド)と交錯してコースオフ。 マーシャルに押されコースへ復帰したが、車体にダメージを受けたのか、次戦へエンジンを温存する為か分からないがピットへ戻った。

レースの内容から、フェラーリとブリヂストンは、F2004Mシャーシと今季のタイヤについて、まずまずの高性能を確認した模様。

冬のテストからF2004Mのフロントウイングは、翼端板の下側が流行のトンネル形状からフラットな板に戻っていたが、実戦もこの仕様で走った。



[Rd.2 マレーシアGP (セパン)  3月18日(金曜)〜19日(土曜)の写真から]

非常に気温の高いマレーシアでの排熱処置として、サイドポッド側面の、
ラジエーターチムニーとフェアリングフィンとの間の部分にシャークルーバーを開けた。

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