2009年01月12日、フェラーリの2009年用マシン「F60」が発表された。
写真は、F1-Live.comや、GPUpdate.net等を参照。
以下、概観から筆者の私見を記す。
フロントウイングは、積極的に翼端板で気流を前輪の外側へ跳ね飛ばそうとはせずに、
メイン ウイングの幅を広く設定してダウンフォースを獲得している。
そして翼端板には小さな縦のベーンが設置して有り、この周辺の気流変動に敏感にならない様に配慮をしている様だ。
フロントウイングの左右には上段フラップが装着されている。
これはフロントウイングが跳ね上げる気流の進路を制御する為。
この制御を行わないとサイドポッド上面からリヤウイングへかけての気流状態が良質なものとは出来ない。
ノーズコーンからフロントウイングを接続するステーは前進角を持った形状となった。
これは今(2009)年からの技術規定でフロントウイングの位置がこれまでよりも前方となった為。
あまり前方にステーが存在すると、回頭性に悪影響が出るのかもしれない。
装着が義務付けられているオンボードカメラはノーズ先端位置の左右へ装着された。
この配置は、カメラの存在が他の気流エリアに害を与えない様にする為の配置だと考えられる。
溝付きタイヤと比較して、スリックとなった前輪は回頭性がクイックとなり、
後輪もスリックなのでターンイン時のリヤのスライド限界値も高くなる。
1998年に溝付きタイヤが義務付けられた際にはホイールベースを長くしたマシンが成功を収めたが、
スリックタイヤとなった今(2009)年からは、その例の逆で各チーム共ホイールベースの短縮が予想される。
サスペンスションの設計は筆者の事前の予想から外れ、ゼロキール・コンセプトを継承した形となった。
筆者の考え方からすれば今(2009)年の技術規定でのゼロキール式は懐疑的だ。
筆者はこのマシンが完成形とは思えない。開幕戦までに空力デバイスのアップデートが予想される。
「F60技術仕様」 | |
フェラーリ製LSD(リミテッド・スリップ・ディファレンシャル) | |
ギア数: 7速+リバース | |
ブレンボ製ベンチレーテッド・カーボンファイバーディスクブレーキ | |
冷却水、オイル、ドライバーを含んだ重量: 605kg | |
BBS製ホイール(フロントおよびリア): 13インチ | |
フェラーリとマネッティ・マレリ社の共同開発によるKERS(運動エネルギー回収システム) | |
エンジン | |
タイプ: 056 | |
気筒数: 8 | |
シリンダーブロック:アルミ鋳造製 Vアングル90° | |
バルブ数: 32 | |
ニューマティック・ディストリビューション | |
総排気量: 2398cm3(立方センチメートル) | |
ピストンボア: 98mm | |
重量: 95kg以上 | |
マネッティ・マレリ製デジタルエレクトロニックインジェクション | |
マネッティ・マレリ製デジタルエレクトロニックイグニッション | |
燃料: シェルVパワーULG66/2 | |
潤滑油: シェル |
動画映像(←ピンぼけで解り辛い;)を観る前に、まずは鮮明な写真から。
(この模型では、)サイドポッドの後部の空力処理がオカシイ。
流速の遅いラジエーター・アウトレットの所為で流れの圧力が高く、糸が張り付いてしまっている。
エンジンの排気エネルギーが供給されれば上手く流れるのだろうが、
それではスロットル開度で空力特性が大きく変動してしまう。
実際、2009年シーズンのフェラーリは何度かサイドポッドのデザイン変更が施されていた。
ロールフープ・カメラの気流進路に注目。
支柱のある中央ではその後部で気圧が低下するのでカメラ上方の気流は下方へ下がるが、
支柱の無い両側では糸はあまり垂れ下がっていない。これはリヤウイングへの気流供給に影響する。
リヤウイングの翼端板付近では各部で渦が起きている。
ノーズ先端に荷かる高圧の為、ノーズ先端上面の気流は左右へ別れている。
意図的にフラップ両端を下げてあり、前輪の空力悪影響を避ける為に、気流を外側へこぼす様にデザインされている。
この部分は、翼端板と合わせて各チームが2009年シーズンの空力開発でテーマとなった部分だ。
車体左側(写真で見て右側)は実戦のF60と同じ形状に筆者が翼端板の後部を切り取った。
翼端板上縁がストレートに伸びる車体右側(写真左側)と比べて、翼端渦が異なる。
切り取った側では、外側へ大きく噴き出す翼端渦を上手く利用して、
上段ウイング下面の気流を外側へ抜いてダウンフォース増加に寄与している。
左右の翼端板上縁の形状が異なる事が解る写真。明らかに翼端渦が異なる。
左側(実戦のF60)の方が渦を利用して上手くダウンフォース増加を実現している事が解る。
サイド・ディフューザー側面の流れは、後輪の後方ではなく、僅かにディフューザー後方へと向かっている。
これは車体“中央部”後方の、車体底面の気流吸い出しの効果が大きい(=L/D比が良い)事を示すと云っていいだろう。