まず目に引かされるのがノーズ。今季の規定の範囲、そのままの形で現れた。
チームから事前に宣言されていた通り、速けりゃ見た目はどーでもいいコンセプトその物で、
ここまでそのコンセプトを徹底的に追及されると、もう清々しいものを感じてしまう気もするが、
真面目な話、カラーリングの工夫次第でもう少し何とかなるかもしれない。
重大な事は、モノコックの設計がシーズン中に変更が許されないレギュレーションとなっている為、
もしここで失敗すると1年間を棒に振ってしまう危険性だ。この件はmixiのF1コミュでも話に挙がっていたと思う。
過去、ジョン・バーナードがフェラーリに在籍していた当時、1994年の開幕前に語っていた事は、(筆者の記憶が確かならば)
「シャーシの改良とは、結局のところ(最終的な)グリップを高める事なんだ。」とズバリ中核をコメントしていた。
例えばコーナリング中、前から見てタイヤのストローク方向と車体の受ける角度を考えれば、プッシュロッドが作動し易い角度に見える。
しかし、フロントの上下ウィッシュボーンをここまでハの字にしてしまうと、
ホイールのストローク方向(上昇すると共に外側へも広がってゆく)に対して、プッシュロッドでは車体へ浅い角度で少ない入力長となってしまう。
そこで、ストローク時のアーム(特にアッパーアーム)の軌跡だけを見れば、プルロッドでも作動しそうだ。
ハイノーズでのフロント・プルロッドは筆者も過去いくつも発案して来たが、ここまで大胆な形で実戦投入されるとは賞賛に価されるだろう。
ここでポイントとなるのは新規定で、ノーズコーンの“上面が”リファレンスプレーンから上方に 550mm 以下でなければならない事だ。
ノーズ上面の高さが 550mm 以下と規定された以上、ノーズを高くするには、ノーズの下面の高さを上げるしかない。
よって、どうしても必然的に上下に薄いノーズコーンが出来上がる訳だ。(注: モノコック接続部辺りは550mmより高くても構わない。)
昨年同様フロントウイング・ステーは後方まで延ばし、フラップが禁止されているウイング中央の後流を整えている。
フロントサスはプルロッドとされた事から、概観よりも内部ユニットの構成が非常に興味深い訳だが、なかなか目にする事はできなさそうだ。
サイドポッドの全高は高く、リヤウイングへの影響が大きい上面は、外側が高く、内側が低くされ、両者はなだらかなラインで繋げられている。
左右で高さを変えるサイドポッドの手法は、左右の高さの差が少ない程に、後部で合流させるデザインが容易となる。
サイドポッドのアンダーカットは、レッドブル等と比べると前方の位置で最大幅に達し、そしてこれもなだらかにコークパネルへと続いている。
コークパネルでは、狭く絞り込まれた下側と、外側へ比較的広がったままの上側と別けられている。
これは、ラジエーター・コアを通過した気流は運動エネルギーが低下し、この遅い流れをディフューザー上面へ触れさせたくない理由からだろう。
21世紀に入っても多くのシーズンでフェラーリの特徴的な部分は、
サイドポッドのラジエーター・エアインテークの外側へと、気流を左右へ別けるスペースがある事だ。
サイドポッド側面で気流を左右へ別け、その気流を絞る事で流速を増し、前輪が巻き起こす乱流を整流してリヤへ流すと云う、
90年代からの手法が今も僅かだが垣間見れる。
リヤ・サスはようやくプルロッドとされたが、ロッドはレッドブルの様に前方へは伸ばしておらず、作動性は良好かもしれない。
さて、リヤエンドだが、ラジエーターを通過した空気を排出させる出口の大きさが、明らかに足りない。
開幕までに、ほとんどのチームがレッドブル型のギヤボックス上・大砲排気としてくる気もするが、果たして…?
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