フェラーリSF15-T   text by tw  (2015. 1.31土)


昨年フェラーリは未勝利だったが、それは1993年以来だ。
そしてチームの構造改革が行われ、新体制では、ジェイムズ・アリソンがテクニカルディレクターに留まり、
シモーネ・レスタがチーフデザイナー、マティア・ビノットがパワーユニットディレクター、
ロレンツォ・サッシがパワーユニットチーフデザイナーを務める事になった。
ジェームズ・アリソンは2015年型マシンでは、ダウンフォース、パワーユニットの出力、ドライバビリティの3つに集中したと述べていた。

2015年 1月30日、フェラーリの2015年用マシン「SF15-T」が発表された。
この新車の概観は、F1通信 等を参照。以下、車体の概観から筆者の私見を記す。



ノーズは長く、先端は丸みをおびた形状となった。ウイリアムズの様に攻めておらず無難な結論か。

フロントウイングのカスケードは、車体内側部分では翼端板を設けずにカールさせて処理してある。
ケスケード上面にはストレートなスプリッターがあり、黒いフィンも着いているが、ウイング上の気流は最終的に外側へこぼれる向きとなる。

フロントウイング下部のスプリッターは左右2枚づつで後流をコントロールしている。
ノーズ横のカメラの積極的な空力利用は止めた様だ。

フロントサスは今年もプルロッドを採用しているが、
上下ウィッシュボーンのハの字の角度がだいぶ弱まり、フロントロールセンターが低められた。
方向で云えば、ロールセンターは低い方がコーナーでの限界が高く、ロールは大きくなる。
ロールセンター高の設定は車輌によって理想のポイントが異なるが、F1は90年代から空力優先でフロントが異様に高い。

ノーズの低くなる地点が始まるのはコクピット開口部の位置から遠くない。
これがプッシュロッドなら取り付け高を確保しなければならないので、ノーズ上ラインを空力特化できるのはプルロッドのメリットではある。

前輪のブレーキダクトは前方まで迫り出し、干渉抵抗が大きい代わりに冷却空気の供給量の安定を図っている。

モノコック両脇のバージボードは、下部が前進している形状で、このタイプは1994年のロータス以来だろうか?
これはフットボックス下の気流をより多く車体下方へ導こうという意図が見えるが、
先端の断面全てが垂直にないバージボードは気流変動が敏感になるかもしれない。

ミラーのステーは角度があり、空力に利用している。
これはミラー後ろのウエイク(空気の塊)を飛ばす効果があるかもしれない。

サイドポッド上面前部にある横方向のベーンは左右でうねりがつき、これも前方から迎える角度の異なる気流にそれぞれ対応している。

エンジンエアインテーク下のセパレーターには、逆三角形の穴があるが、オイルクーラーにしては小さいサイズだ。
オイルクーラーの流路はどこにあるのだろうか?

リヤのアップライトは多層フィンが目を引く。これはディフューザーの気流吸い出し量を増す筈だ。

リヤサスは発表仕様なのか、アッパーアームの角度が小さい。実戦でもこの角度なら、リヤのロールセンターは高くなる。
同時に、レーキ角(車体の前傾角)が大きく見える。実戦でレーキ角が強い場合は、ダウンフォース発生中心はフロント寄りとなる。

リヤウイングは今季もスワンネックで支持される。これはダウンフォースを得る為に重要なウイングの下流を重視したアイディアだ。

リヤウイングの翼端板の後縁にはガーニーを装着している。このガーニーは高速域で車体の安定性が増すと過去に読んだ記憶がある。

SF15-Tは現時点では全体的にあまり書く事がない。
重要なフロントロールセンター高を見直した事でビークルダイナミクスは改善されているだろう。
今季のドライバーは、キミ・ライコネンと新加入のセバスチャン・ヴェッテルのワールドチャンピオンコンビだ。

(このページのここまでの最新更新日:2015. 1.31土

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