レッドブル RB5   text & illustration by tw  (2009. 2.09 / 4.29)


2009年 2月09日、レッドブルの2009年用マシン、「RB5」が公開された。
写真はGPUpdate.net等を参照。 以下、RB5の概観から筆者の私見を記す。


大きく制限された今(2009)年からの車輌規定の中にあって、RB5はかなり斬新なマシンとなった!

ノーズ先端は狭めで、上下の厚みも薄く、空力抵抗が少なそうだ。
ノーズ先端には冷却用の穴が開いている。

フロントウイング・ステーは、ノーズからストレートに降りている。
この形状でフロントウイングにかかる荷重を支える強度を維持できていのるか若干不安な構造だ。

ノーズ上面の両端は、なんと上側にツイン・キール状のデザインが採用された。
プッシュロッドの車体側取り付け高さからして、
このノーズの上側ツインキールは、プッシュロッドの角度を立てる為では無い様で、謎の付加物だ。
こういったデザインとされた意図は筆者はまだ推測できていないが、恐らく空力的な理由の可能性が高いと思う。

ノーズの上側キールの後方では、ノーズ上面両端は丸みが付けられており、ノーズ上面の気流を左右へ分けている。



フロントウイングのメインウイングは中央部が少し高くされている。
これは、この部分は規定でフラップを付けられず、且つグランドエフェクトを発生できる高さでもない為、
ダウンフォースをあまり発生できない現状からこういったデザインでも空力的に問題は無い。
この形状は1991年のウイリアムズFW14から流行したフロントウイング中央部を少し高くするデザインが彷彿される。

フラップは寝かせめで面積の広いタイプ。これは安定したダウンフォース発生状況を実現できると考えられる。
上段フラップは間隙フラップ式で、フロントウイングが跳ね上げる気流進路を制御している。
これは今(2009)年からの規定下では必須のアイテムだと予想される。

翼端板は大まかにストレートなラインで、あまり積極的に気流を外側へ跳ね飛ばそうとはしていない。
両端の底面プレートはトンネル型ではなくフラットな形状だ。



前輪のブレーキダクトは下を向いており、フロントウイングが跳ね上げる気流に対応している。

フロントサスで特徴的なのは、タイロッドがアッパーアームと同じ高さではなく、やや下段に位置している事だ。
これは恐らくフロントウイングが跳ね上げた気流に干渉させない様にする目的かもしれない。

ロワアームはツインキールで支持されている。
これはフロントのロールセンターを少しでも下げたいからだ。



マクラーレン同様、狭い規定の中でサイドディフレクターを装着している。
これで前輪が巻き起こす乱流から少しでも車体底面への気流を守る効果が有るだろう。

リヤビューミラーは規定一杯まで左右へ離されている。これはリヤウイングへ向かう気流を乱さない様にする為だ。
ミラーのステーはサイドポッド上面から伸びている。

サイドポッド両端前方にはサイドプレートが装着されている。
このパーツにより車体側面の気流を少しでも安定させる事が出来るだろう。

サイドポッド後半は、リヤサスのアッパーアームよりも低く落とし込んであり、
全体的に驚く程極端な低い落とし込みで、過去のF1マシンの例の中でも最も低く落とし込んだ物かもしれない。
コークボトルの幅もかなり狭く絞り込まれており、
この内部通路の狭さで、ラジエーターを通過した気流がリヤエンドへ問題無く抜けられるのか疑問な程だ。

エンジンの排気は、リヤサスのロワアーム手前で上方排気している。
排気ガスの耐熱対策の為か、アッパーアームは内側が太めだ。



後輪側から車体側へかけて斜め下へ伸びるロッドが見える。
これはもしかするとリヤサスペンションはプルロッドになっているのかもしれない。
そうだとしたらリヤボディ上面を低くするのにかなり効果的な設計だ!
筆者もどういった車輌をデザインする際でもプルロッドを採用できないか常に検討するが、
近年のF1マシンでプルロッド形式が実際に投入される例は少ない。



サイドプロテクターは気流を左右へ分ける形状となっており、
プロテクター上面でリフトを発生させない様に配慮している。

サイドプロテクター後部にはレギュレーションフィンは備え付けられていない。

インダクションポッド前部から下方へ2本のステーが設けられている。
これで車体をレッカーで持ち上げる際のロープを通す穴を実現している

このステーは、インダクションポッド先端よりもやや後ろに位置しており、
車輌規定一杯よりも、後輪位置に対してモノコックが前進している事が推察できる。



リヤウイングで特徴的なのは、翼端板がかなり低くまで存在している事だ。
もしかするとディフューザーと一体化しているかもしれない。

昨(2008)年のレッドブルのマシンでも同じだったが、
リヤウイングのフラップ中央部の後端は少しだけ低くしてある。
こうする理由は、気流を中央へ寄せる効果が有り、若干だが翼端渦の軽減を期待できる。



レッドブルはワークスでは無くプライベートチームだが、
このかなり意欲的で攻撃的なRB5というマシンを効率良く走らせる事が出来れるならば、
かなりの好成績が期待できると想像できる。


(このここまでのページの最終更新日:2009. 2.09


(2009年 4月29日 更新)

02月9日に、このページにて、
> ロワアームはツインキールで支持されている。
と記述しましたが、実際にはキールではありませんでした。お詫びして訂正致します。

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レッドブルRB5の、ノーズコーンを取り外した状態のモノコック前面の写真を確認できた。下にスケッチで示す。
他チームのマシンはモノコック断面の寸法を規定(ピンク色のエリアで示す)通りの最小限の寸法で設計して、
ノーズからモノコックへ気流を通す空間を最大限にしようとデザインされているが、
RB5は規定最少寸法に囚われず、空力性能とサスペンションの性能の為にあえて下図の様なデザインとしている。



ノーズ下面を丸みをおびさせたデザインとした理由は、ノーズ下方の気流変動を穏やかにする為と考えられる。
そしてコーナリング時の気流の向きの変化についても考慮しているのかも知れない。
このノーズ下面を丸みをおびさせたデザインは、アドリアン・ニューウェイが空力デザインに関与した、
1998年のマクラーレンMP4-13を彷彿させる。今回のレッドブルRB5のデザイナーはA.ニューウェイである。

モノコック上面両端のコブは、フロントウイングが跳ね上げる気流が、
モノコック上面の流れに影響を与える度合いを軽減させる目的かもしれない。

サスペンション面では、若干だがロワアームをアッパーアームより長くする事で、
ストローク時に理想のキャンバー変化に近付けることが出来る。

タイロッドとアッパーアームを分割する事で、アッパーアームのアップライト側の取り付け位置を高くする事が出来る。
(ホイールは円形なので、ホイール内の最も高い位置にアッパーアームを取り付けると、
 タイロッドをホイール内でアッパーアームと水平の位置に取り付ける事は出来ない。)

タイロッドをアッパーアームより下側に設置した事で、もしかすると丁度フロントウイングが跳ね上げる気流進路の、
タイロッドのスリップストリーム内にアッパーアームがあるのかも知れない。

(このページの最新更新日:2009. 4.29
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