今(2021)年のマクラーレンについて説明するにあたり前置きが必要だ。
今年のF1マシンは、昨(2020)年に猛威をふるったチャイナ ウイルスの影響によるコスト削減が必要とされた事から、
2021年のマシンは、基本的には昨(2020)年のマシンを流用しなければならないというルールが決められた。
しかしマクラーレンだけは、そのチャイナ ウイルスが漏れる前から、今(2021)シーズンのパワーユニットをルノーからメルセデスへチェンジする事が決まっていた。
(尚、2021年型のパワーユニットを使用するという事だ。)
パワーユニットを変更するにあたり、最低でもモノコックとギヤボックスは変更しなければならないし、
PUを制御する電気系統や、冷却系統もメルセデスの仕様に対応しなければならない。
この、「変更しなければならない」という部分をマクラーレンは良い方向へ最大に解釈し、彼等のマシンは事実上、“ほとんど完全な新車”となっている可能性が高い。
そして2021年 2月15日、マクラーレンは2021年用マシン「MCL35M」を発表した。
写真は F1-Gate.com 等を参照。 以下、概観から筆者の私見を記す。
極論で言えば、ノーズ下面から路面までの間で大量の空気を後方へ流せる程、車体の空力性能に寄与する。
ドライバーはランド・ノリスと、新加入のダニエル・リカルドのコンビだ。
F1通信にMCL35Mの大きなサイズの写真がアップされていた。こちらを参照。
そして、以下はネット情報からのスペック。
マクラーレン MCL35M スペック | |
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重量 | 752 kg(ドライバー及び燃料含む) |
前後重心位置 | 前輪車軸側で45.4% 〜 46.4% |
ギアボックス | カーボンファイバーコンポジット製 |
トランスミッション | 前進8速・後退1速 |
デフ | 遊星ギヤ式 多板リミテッド スリップ クラッチ式 ディファレンシャル |
クラッチ | 電動油圧式 カーボン製 多板プレート |
電子機器 | マクラーレン アプライド テクノロジーズ製 |
ブレーキシステム | フロント/リヤ: 6ピストン ブレーキ キャリパー リヤ: ブレーキ バイ ワイヤ コントロールシステム |
ステアリング | ラック アンド ピニオン型 パワーアシスト |
タイヤ | ピレリ社製 P Zero |
ホイール | エンケイ社製 |
パワーユニット | |
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型式 | メルセデス-AMG M12 E パフォーマンス |
最低重量 | 150kg |
エンジン排気量 | 1.6L |
気筒数 | 6 |
バンク角 | 90度 |
バルブ数 | 1気筒あたり4 |
最大回転数 | 15,000 rpm |
最大燃料流量 | 100kg/時 (10,500rpm) |
燃料搭載量 | 最大 110kg まで |
燃料噴射方式 | 直噴・最大500 bar |
エネルギー回生システム | クランクシャフト結合 MGU-K & ターボチャージャー MGU-H |
エネルギー貯蔵装置 | リチウムイオン電池(20〜25kg) 1周あたり最大 4MJ 貯蔵 |
MGU-K 最高回転数 | 50,000 rpm |
最大出力 | 120 kW |
最大回生量 | 1周あたり2 MJ |
最大放出量 | 1周あたり4 MJ |
MGU-H 最大回転数 | 125,000 rpm |
最大出力 最大回生量 最大放出量 | 無制限 |
今(2021)年のテクニカルレギュレーションで、ダウンフォース削減を目的に、ディフューザーのスプリッターに制限がされた。
スプリッターの前後長は、ディフューザーの後端より 50mm 前方の地点までしか伸ばせない事と、
その他、設置の条件など色々ありそうだが、詳細は筆者はまだ知らない。
そして開幕前のバーレーンのテストの写真から、MCL35Mのディフューザーにアイディアが見つかった。
ステッププレーン側面の壁を後方へ延長して、センターディフューザーのエリアでスプリッターを形成している。
ただし、ステッププレーン側面の壁を後方へ延長してスプリッターを形成するのはマクラーレンが初めてではない。
1990年代半ばに、ブリヂストンがF1参戦前にタイヤのテストを行うにあたり、
1995年のリジェの中古マシンを使用していたのだが、そのマシンは目的は違えどステッププレーン側面の壁を後方へ延長していた。(下写真)
ただしリジェの中古の場合ではスプリッターの設置幅は 500mm であった。(MCL35Mは約 300mm。)
(筆者撮影)