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トロロッソ STR12   text by tw  (2017. 2.27月)

トロロッソの2017年用マシン、「STR12」は日本時間で2017年 2月27日に発表された。
このマシンの開発テクニカルディレクターはジェームス・キーで、副テクニカルディレクターはベン・ウォーターハウスが勤めた。

昨(2016)年は1年落ちのフェラーリ製パワーユニットを使用していたが、
今(2017)年はレッドブルと同じスペックのルノー製パワーユニットを使用できる。これは非常に大きい要素だ。

新車「STR11」の写真は、F1通信 等を参照。 以下、概観から筆者の私見を記す。



このマシンはいくつか今年のメルセデスと同じアイディアを採用したエリアがあるが、
昨年メルセデスからトロロッソへ移籍したエンジニアが居るのだろうか? そうでなければ説明のつかない部分が複数あるのだ。
以下、カウントしながら綴ってみよう。

ノーズ先端はメルセデスと同じタイプとなり(1)、中央にコブは無く、左右も低い。
ノーズ脇のカメラの位置は、全チーム中、最も離れており非常にアグレッシブだ。
細かい事だが、ノーズホールの所にあるピトー菅もメルセデスと同じく3本だ。

フロントサスペンションは、上下ウィッシュボーンが非常にハイマウント化され、
今年のメルセデスと同じで、バネ下はアップライトから上方へ部品を伸ばしてアッパーアームと接続している。(2)
アッパアーム車体側への取り付けも必然的にメルセデスと同じで、ノーズ上面に近い高さに接続している。

ロワアームもメルセデスと同じく、前後スパンが短い形状だ(3)。接続位置はモノコック先端の中段程までと高い。
後ろ側ロワアームはフットボックス区間の手前の、サスユニットがあるエリアに収まっており、
これでロワアームはモノコックを貫通し、内部でジョイントしてある可能性もある。
その場合、ロワアームの長さに自由度が生まれ、理想のキャンバー変化とできるだろう。

昨年はモノコック上面からノーズへかけてエレガントなカーブを描いていたが、
今年はメルセデスと同様、ストレートなモノコック上面とされ、フロントサスユニット部からノーズへ向かって急カーブさせている。(4)
この方がエアフローに無理があっても、フロントサスペンションの作動応答性は向上する。

現時点でのレッドブルと同じで、モノコック側面にカナードが無いのは未だ何かを隠している様で気になるが…。

数時間前にレッドブルが大胆なサイドポッドで登場したので、兄弟チームのトロロッソがどうなるか注目していたのだが、
サイドポッド前部は昨年のトロロッソの進化版(エアインテークも攻撃的)だが、後部へかけては今年のメルセデスの部類だ。
コークボトルラインの上部が、メルセデスと同じ種類の2段階絞りとなっているのだ。(5)

ポッドウイングが随分と控えめなのは開発の跡が見えないが、垂直ベーンと水平フィンが分離しているのは新しい形状だ。
尚、水平フィンはリフト方向の翼断面となっており、サイドポッド上面の気流の絞り具合を調整している。

サイドポッド後部の高さはメルセデスとは違い、リヤサスペンションのアッパアームと同じくらいの位置と高くしてあるが、
リヤのカウル形状を昨年からのトロロッソの形状を引き継いでいる事からだろう。

メルセデスと明らかに違うのは、低められたリヤウイングへの対応としてシャークフィンを装着している事と、
アンダーパネルの後輪手前でスリットを切っていない事だ。

レッドブルと同じで、リヤサスペンションのプルロッドは前方へ伸ばして車体側と接続している。

工夫の跡が見える3D形状のモンキーシートは、排気流の吸い出しと、リヤウイングを補助する効果がある。
リヤウイングはメルセデスほどではないが、僅かに3D形状に湾曲し、翼端渦を軽減している。

ステーはスワンネックで、前方へ伸びている。

翼端板のリヤウイング下側にはスリット2本切られ、ウイング下面の剥離を軽減している。
この手法を初めて使い出したのはレッドブルだが、筆者の方が4年半程先に考案して本サイトに掲載してある。

トップチームのデバイスを採用する事がそれイコール、ラップタイムの短縮となる訳ではないが、速くできる近道となるのは確かだろう。
尚、走行写真を観るとレーキ角が強い事が判った。これは近年のF1マシンの傾向だ。

昨年メルセデスからトロロッソへ移籍したエンジニアが居るのかどうかは筆者は知らないが、
これまでのコンセプトを変更してまで、少なくとも現時点で判っているだけで5箇所も同じアイディアを採用する例があっただろうか?
前輪のバネ下をアップライトから上方へ部品を伸ばしてアッパーアームと接続するアイディアを用いる事が起こり得て、
更にメルセデスと同時の今年に新規でコークボトルラインの上部をわざわざ2段階絞りのリヤエンドとする確率は何%あるのか?
尚、誤解されるといけないので一言付け加えておくが、筆者はエンジニアがチームを移ってアイディアをもたらす事が悪いと論じているのではなく、
事実として起こった事象を起こったと述べているだけだ。

ドライバーは引き続き、カルロス・サインツとダニール・クビアトが勤める。

(このページの最新更新日:2017. 2.27月
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