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・基本的に筆者はF1マシンの空力デザインを行う際に、低速〜中速程度のダウンフォースを基本レベルとしてデザインしている。
その理由は、現在のサーキットでは平均速度が低いレイアウトが多い為である。

今回、筆者がデザインしたマシンは、結果的に今(2009)年のレッドブルと似通ってしまっている部分が多いが、
これは意識してコピーした訳では無く、空力効率を追求した必然の結果こう成ってしまった。



今回の筆者のマシンで最も特徴的な部分としては、前輪のタイロッドを後ろ引きとした事にある。
これはフロントの重量物を少しでも後方へ近づける為である。
このレイアウトだと、傘型ギヤを介して垂直に立つステアリング・シャフトと、ピッチ・コントローラーが干渉するので、
立体ロッカー(ベルハウジング)として、ピッチ・コントローラーをステアリング・シャフトの後方へ移動して配置してある。



プッシュロッドのアップライトへの付け根は、キングピンから内側へ離している事で、
操舵時にはフロントのライドハイト(地上高)が下がる設計としている。
これにより操舵時のフロントライドハイト低下により、
フロントウイングが路面へ接近し、前輪のへ空力ダウンフォース発生量が増す。



前輪のブレーキダクトは、フロントウイング下流から取り入れる様にした。
(この手法は数年前にカナダGPでフェラーリが試した事がある。)
既存のカーボン製ブレーキ・ディスク&パッドは、有効作動温度領域が「狭い範囲に」限られている。
作動領域より温度が低ければ摩擦力が少しか発生しないし、温度が高ければ過磨耗してしまう。

全開高速ストレート区間を走行中にダクトからの冷却でブレーキ温度が低下してしまうので、
今回のデザインでは、ダクトへの気流供給はフロント・ウイングの下流を取り込む形とした。
高速走行時にはウイング下流は空気密度が低下している筈で、これにより過冷却を緩和しようという狙いである。



モノコック上面の両端には、今(2009)年のレッドブルを真似た「コブ」を設けた。
コブの採用理由は、プッシュロッドの立ち角度を立ててフロント・サスの作動性を良好にする事と、
フロント・ウイングが跳ね上げる気流が、モノコック上面の気流へなるべく悪影響を与えない様にする為である。

モノコック上面は、規定ギリギリのリファレンスプレーン上550mmとした。
これによりフロント部のコンポーネントの重心を下げる事と共に、ドライバーのヘルメット高を下げる事が可能となり、
結果的に低重心なマシンとする事が出来るし、
そして何よりもフロント・サスアームの車体側取り付け位置を低くする事が出来る。
これによりゼロキール形式でも、フロントのロールセンターを低くする事が出来る。



サイドポッド両端の前部には、現在F1でスタンダードとなっている「縦のベーン」を設置した。
これはコーナリング中の車輌のサイドポッド側面ヘ、前輪からの渦流で悪影響を与えない様にするデバイスである。



リヤエンドでは、衝撃吸収構造の上側、テールライトからギヤボックス上面に「センターキール」を設けた。
このセンターキールは、今回のマシンでの筆者の新アイデアである。
これによって衝突安全基準を満たし易くし、
且つ、ギヤボックス上面をロワ・ウイングの下側へ潜り込ませ、車体後流に無理がかからない形状を達成した。

ディフューザーは2009年の新規定の抜け道を突いたダブルデッカーと呼ばれる上下2重構造とした。
これにより車体底面の気流がディフューザーの上側のトンネルを通過し、車体後流の低圧により吸い出す事が出来る。

リヤの上段ウイングは、フラップに規定内の幅でスリットを開けた。
これでフラップ中央部分だけだが3枚エレメントとなり、気流の剥離を少しでも防ぐ事が出来る。


(このページの最終更新日: 2009.10.20火)
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