2011年用 F1マシン空力デザイン by tw | デザイン日:2010.12.08水〜12.21火 Web公開日:2010.12.23木 |
ダウンフォースを発生するパーツは青、翼端板やオンボード・カメラや気流進路を制御するパーツはオレンジ、
サスペンションのピロ・ボールは黄色 (ドライブシャフト含む)、ブレーキ ダクトは茶色(フラップ付き)、
ドライバーの頭部を保護するプロテクターや、スプリング等の柔らかい部品はピンク、
ラジエーター、KARS電動機、排気管、テールライトは赤、リチウム イオン バッテリーは紫か濃灰色、
その他の部分は水色で着色した。
(前面図は、モノコック側面の気流制御フィンを描き忘れたが、作業が面倒なのでこのまま掲載。)
まずはサスペンション・ユニットの説明。
フロントサスは、プッシュロッド式のトリプル・ロッカー。それぞれのロッカーは、 正面図の為に観えないが、アンチロールバーは前後方向へロッドを伸ばす、コの字型・中空管トーションバー。
今回作は車体のホイールベースが短い事から、
そしてピッチ コントローラーは左右へストロークできるスペースが狭いので、
モノコック断面が、ストロークを避ける為に薄い部分があるが、 |
リヤサスを前側から見た図。プルロッド式のトリプル・ロッカー。 トランスミッション(茶色縁で内部が灰色の部分)を覆う形で構成する。 ピッチ コントローラーは、スルーロッド式とする事で容積吸収の空気室を必要としていない。 これは前後方向に立体のロッカーとして初めて実現できるアイディアだ。
ユニット全体の断面積が大きく、空気抵抗が大きそうに観えるかもしれないが、 |
2010年度のF1では、長いホイールベースでブレーキング性能や高速コーナーの限界向上を達成していた様だが、
筆者には多くのマシンが、中低速コーナーのターンイン時にフロントの入りがどうもあまり良い様には観えなかった。
制動距離や高速コーナーの限界速度はホイールベースが長い方が性能が高いのは物理的に事実だが、しかしF1のサーキットには中低速コーナーが多い。
よって、中低速域のビーグル ダイナミクスを向上させた方がラップタイムは速いのではないか?と、短かめのホイールベースとしてみた。
ノーズ先端の高さは、昨年までよりもかなり低くした。
これは昨(2010)年まで車検に通っていた、「マルチ・トリック・ディフューザー」の禁止が理由で、
リヤで大量に吸い出せないのであれば、フロントで大量に入力する必要は無い。つまり最適な供給量はこれ位であろうかと。
装着が義務付けられているオンボードまたはダミーカメラは、フロントウイング中央部の後方へ設置した。
これは他チームのアイディアであるが、僅かでもフロントのダウンフォース発生に寄与できるかもしれない。
前輪のブレーキ ダクトは、フロントウイング下側から気流を取り入れる形とした。
車速が高まるほどウイング下側の空気は薄くなるので、高速時にブレーキ温度を過冷却させない狙いもある。
今年からマルチ・トリック・ディフューザーが禁止された事で、車体底面へ綺麗な空気を導く事による車輌性能向上寄与度は、
昨年までよりだいぶ低下すると考え、ゼロキール&ハの字アームの空力設計にはこだわらなかった。
そして車輌の総ダウンフォース発生量が低下する事から、サスのバネは柔らかくされ、おそらくサスは動かす方向で開発される事になると思う。
(昨年の時点でも、ルノーはサスを動かす方向の設計で成功を収めている様であった。)
モノコック側面には気流進路制御フィンを(正確には片側6枚)を備えた。これで空力変動を安定化させる狙いだ。(*正面図では描き忘れた。)
当然の様にリヤビュー・ミラーのステーも整流板として役に立ってもらっている。
2009年開幕時から問題になっていたステップ ド ボトムの規定解釈については、
今回筆者は真面目に“前後全域において”ステップ側面に構造物としての物体を設けた。これで車検に落ちる事は無いであろうと思う。
そして空力性能向上を狙い、前輪車軸から後方 330mm の地点より前方へ空力構造物を設け、翼断面の様にRをつけて伸ばした。
この辺りのエリアは今(2011)年シーズンの空力開発の重要ポイントになると筆者は確信している。
ステップ フロア側面の左右への広がり開始点は「ドライバーの尻の位置」から決定した。尻の幅的にそうせざるをえない。
先日筆者は、尻の高さを50mm上げるアイディアを発案したが、現在のレギュではこれはあまり効果は少ないと判断した。
リファレンス プレーン、ステップ プレーンと、前側から気流を吸い込み易い様に設計した。(下面のRつけと翼端板も有り。)
尚、フットボックス下の2本の縦の柱は、単にレギュレーションによる負荷テストに耐える為の設置で、これによりやや空気抵抗は増す。
KERSの電動機は、エンジンのクランク・シャフトと直結させておいたが、
もしモーターがエンジンの最高回転数である1万8千回転/分に耐えられなければ、間に遊星ギヤを噛ませ減速すれば良いだろう。
筆者が今回選択したのは、エンジン排気流がサイド・ディフューザー上縁を狙う方式である。
(もしかすると最も設計難易度が高い方式かもしれない。)
これにより、コークボトルとサイド・ディフューザーの気流を加速できる。
ここに排気管を置く場合、リヤサスのロワアームは限界まで低くか、思い切り高くかの二択となる。
筆者は今回、(難易度の高い)後者に挑戦した。アームの耐熱加工は必須である。
つまり、車体中央線より左右へ 75mm 以内の区域に計2本のウイング・ステーを設け、
中央の 150mm のウイングは可変させずに固定。(高速サーキットのスパとモンツァを除き,) 常にMaxダウンフォース仕様に設計しておく。
これにより、中央 150mm のリヤ ウイングは簡単にハイ・ダウンフォース仕様の3エレメントと出来る。
そして車体中央線より外側へ 75mm 以上の左右2つのウイングは2エレメントで、ドライバーの操作で迎角を可変させる。
通常走行時はMaxダウンフォースの迎角、追い抜き時にはボタンを押して迎角を寝かせる事になるであろう。
リヤ ウイング翼端板のウイング上側高圧排出スリットは、干渉抵抗を嫌って3切れに留めておいた。
後輪ブレーキダクトは、横図では描いていないが、後ろ図では多段フラップで埋め尽くした。
通常、筆者のマシン・デザイン作業は、まず車輌基本コンセプトを決め、新アイディアの駆使について考慮し、鉛筆を走らせていたが、
今回のマシンを題材に、完璧版にまとめ直して描きあげれば、ほとんど別物に成る。だが今は疲労から(時間的にも)描く気力が起きない。
もうデザイン能力の“ピーク”はとうに過ぎてしまって居る。
今回は終始模索しながら、ぐだぐだ な未完成作と成ってしまった。
本当に心身共に弱りきって居り、
デザイン・統合・ディレクション能力自体が、「完全に衰えたなー。あまりにも。」と云うのが正直なところだ。
筆者は、これからは若い時代に体得したノウハウの応用活用と、経験からのディレクション統合力でデザインを行う事になると思う。
上のマシン・デザインを掲載した後に、 一部ボディワークのレギュレーションに違反している事に気付きました;
今(2011)年からの規定が、2010年以前と変わっていなければ、 |