ルノー本社はチームとしては撤退したが、エンジン・サプライヤーとしてはF1に留まる。
ルノーF1チームと、昨(2009)年に引き続きレッドブルF1チームへエンジンを供給する。
昨年までのルノーエンジンは、燃費効率は良かった様だが、ライバルチームのエンジンより出力で劣っていた様だ。
現在のレギュレーションはエンジン開発の凍結状態となっており、一部の周辺機器等しかアップデートを行えない。
その為、エンジン性能を劇的に向上させる事は非常に困難である。
それでは、新車「R30」の写真は、Formula1 GPUpdate.net等を参照。 以下、概観から筆者の私見を記す。
色が黒い為に目立たないが、昨(2009)年同様フロントウイング・ステーから後方へ続く縦のフェンスがあり、
フロントウイングがかき乱す気流から、車体下部中央の気流が乱されない様に守っている。
これらの事から、フロントセクションがこのマシンのマイルドな空力コンセプトを表していると思う。
多少空気抵抗が大きく、ダウンフォースの最大発生量が少なくても、ダウンフォース発生量を常に安定した状態としたいのだろう。
尚、現在筆者が入手してある写真ではフロントウイングは昨年の物を装着している様だ。
横から見たロワアームの角度は前傾している様で、それならばアンチ・ダイブ・ジオメトリーと出来ている。
タイロッドは、昨(2009)年のブラウンGPに習ってロワアームと同じ高さで取り付け、重心高を下げている。
アッパーアームの後ろ側アームは、車体側取り付け位置が大分前寄りで、剛性面で懐疑的だ。
モノコック上面先端に「2つの穴」が確認できる。
これは1998年から近年までフェラーリが採用していたフロントサス形式と同じ可能性が高い。
この形式は、左右のトーションバー・スプリングの車体側取り付け位置にリンク装置を設け、
そのリンクを車体上面へ繋げる。これで、車体の外側からネジを回すだけで、
ライドハイト(車体の地上高)や、トーションバーのプリロード(事前にスプリングを捻っておく事)を簡単に変更できる。
その為、事前にサスのスプリングを捻って、その位置でスプリングをボルトで固定しておき、
低速域ではサスをバンプ・ストロークさせない様にするセッティングである。
プリロードをかけて地上高を低くセッティングしておけば、
低速域ではサスはバンプ・ストロークできない代わりに、地上高が低い状態で走行できる。
そしてダウンフォースが増す中高速域では通常のスプリングの硬さを発揮し、通常のサスの機能を果たす。
今(2009)年からレース中の給油が禁止され、レース序盤とレース後半とでは車重が大きく変動する。
1998年にフェラーリが導入したこのフロントサス形式とすれば、
必要であれば、ピットインの際にフロントサスのセッティング変更が可能である。
前側アームが車体側からホイール側へ後退角となっているので、前輪位置に対してモノコック位置が前進している事が判る。
前輪のブレーキダクトは、小型の縦のフェンス等を取り付けたりと、配慮が細かい。
リヤビューミラーは昨(2009)年のフォースインディアのアイデアのコピーで、
ミラー・ステーの車体側取り付け位置からわざわざミラーの外側までステーを伸ばしてミラーを支持し、
ミラーのステーという名目で、ボディワーク禁止エリアに気流進路制御プレートを装着している。
このパーツは、フロントウイングが跳ね上げる気流の進路を制御している。
サイドポッド上面の後部の高さはあまり低められておらず、車体上面で発生するダウンフォースはやや少なそうだ。
エンジンカウルはシャークフィンを採用。ただしレッドブルの様にリヤウイングの位置までは達していない。
リヤ・サスペンションはプッシュロッド式。
アッパーアームの前側アームの車体側取り付け部分はカウリングされている。
アッパーアームの後ろ側アームの車体側取り付け位置は、昨(2009)年のレッドブルの様に、車体中央近くにある。
これはギヤボックス・ケーシングの構造上の理由でこの位置となったのかもしれない。
リヤ・ディフューザーは極秘事項の様で厳重に隠され、現段階ではまだ形状を見る事は出来なかった。
フロントウイングの翼端板は特に工夫は見られず、まだまだ改善の余地がありそうだ。
フロントサスのプッシュロッドの角度は浅く、作動性があまり良くはない筈である。
サイドプロテクターはレッドブルの様に気流を左右へ分ける形ではなく、前面が高圧になり空気抵抗が大きそうだ。
ロープを通す穴はマクラーレン式である事が確認できた。
リヤウイング上段は、上下逆のW字型となった。
これはウイングの上下を通過する気流の横流れを抑制する効果があるのかもしれない。
ただこのリヤウイングには、レギュレーションの最大高を超える正体不明の銀色のガーニーフラップの様な物が装着されている。
この「R30」の開発作業については筆者には不可解な点がいくつもある。
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