このサスペンション形式の問題点は、ロールセンターが高くなる事や、
ストローク時のトレッド変化やキャンバー変化 等のジオメトリーの問題、
プッシュロッドの作動性の不利、そして構造的に剛性も不利な形状となる。
フロント部分の課題は、空力性能とサスペション性能の妥協点をどこに見出すかであるが、
トヨタチームは昨(2005)年、今後の開発コンセプトに上記のマクラーレンMP4-20の路線を選択した。
そしてその開発計画は前倒しされ、トヨタはそのシーズン中(2005年)のマシンTF105を改造し、
サスアームの角度をつけて高く設置し、センターキール構造は残したままの「TF105B」を製作し、
2005年シーズンの終盤2戦に実戦投入した。
センターキールが残されたままでは本来の空力改善の目的がなくなってしまうが、
ハの字に下がる特異なフロントサスペンションとした場合のタイヤの使い方を学ぶ為のデータ採取が
TF105Bを実戦に投入した目的であったと考えられる。
(残されたままのキールの図は、「マイク・ガスコインがTF105の進化を語る」ページの下部の、
日本GP編「TF105 Vs TF105B」フロントサス正面図イラストを参照。)
しかし今回の「TF106」となってもモノコックにはセンターキールが残されている模様。
テクニカル・ディレクターのマイク・ガスコインは、
TF106のBバージョン車を第7戦のモナコGPまで投入しない旨のコメントをしたが、
もし、開幕からの6レースを、センターキールを撤去していないモノコックで戦うのであれば、
その選択に筆者は大いに疑問を抱かせられる。
[リヤ・サスペション]
既出の記事に拠ると、リヤサスのトーションバー・スプリングはギアボックス側面に縦に置かれ、
回転式ダンパーに問題を抱えていたという事で一般的なピストン式のダンパーへと戻され、
ギアボックス上面に配置するレイアウトとなったとの事。
(ここまでの最終更新日:2006. 2. 8)
[開幕前の空力アップデート]
TF106は2006年2月中頃から、空力仕様をアップデートした状態でのテスト走行を開始した。
フロントウイングは、昨年のモナコGPで使用した様な、メインウイング上の両端部分に
追加フラップを立てた2階建て仕様となり、これは細部まで凝った形状となっている。
そして、ノーズ横には、フロントウイングが跳ね上げる気流の進路を制御する安定翼を増設した。
この事から、ダウンフォースを稼ぐ為にフロントウイングの両端部分では気流を跳ね上げたく、
一方、車体下面へ供給する気流の都合上、フロントウイングの中央部分では気流を跳ね上げたくないのかもしれない。
ボーダーウイングには、小型のディフレクターを新設した。
サイドポッド前部のミドル・カナードは、後退してサイドポッド側面と一体化した。
これでこの部分は昨(2005)年のBARと同じ様なタイプとなった。
このカナードは、昨年型よりも迎角が控えめとなった。
そしてサイドポッドの上面は、両端へ向けて低くなる撫肩の形状となった。
サイドポッド両端は高い方が、前輪の巻き起こした乱流を整流する効果が高いと思われるが、
TF106の場合、サイドポッド手前のカナードで整流させているのかもしれない。
サイドポッド側面下部は若干狭く絞り込まれた。
サイドポッド上方のミニウイングは、ラジエーター・チムニーで支持している模様。
フェアリングフィン上の追加フラップは間隙フラップ化された。
後輪手前の縦のベーンは、昨年終盤の2段式から1段式となった。
インダクションポッドのミッドウイングは前後2段構成となった。
このウイングの幅は、前後共に、規定範囲一杯の600mmとなっていると思われる。
前側ウイングの断面はダウンフォース発生型で、後ろ側ウイングは水平翼に近い形状。
前側でダウンフォースを稼ぎ、後ろ側でリヤウイングへ都合の良い気流を供給しているのかもしれない。
リヤ・ボディ上面の、エンジン排気流の道筋にはシャークルーバーが開けられた。
テールライト上面の形状は跳ね上げられ、リヤウイングの気流進路と合わせている。
リヤウイングの上段ウイングは、両端の下面を持ち上げたタイプ。
この上段ウイングの下面には排気ガスの温度を計測データを取る為のセンサーが貼られている。
(ここまでの最新更新日:2006. 2.17)