フェラーリ F2005   text by tw  (2005/ 2/25〜)


「F2005」は2月25日にマラネロで発表された。写真は フェラーリ公式サイトF1 Live.comF1Racing.jp 等で参照。

ロリー・バーンのデザインと言えるのは、昨年の「F2004」が最後との事。
F2005の実質的なチーフデザインはアルド・コスタとなった。
テクニカルディレクターは引き続きロス・ブラウン。

今回の発表会でのF2005は、とりあえず概観で判る部分では、昨年からの正常発展型であると思う。
F2004から変わった部分は、車体上面の形状で、排気管の周辺が特徴的。

F2005はこれからすぐに実戦投入されるマシンではなく、まだ2ヶ月程の開発期間がある様なので、
何か新しいアイデアが有っても、現時点では、それらの多くは隠してある筈である。



(2005年 序盤の開催日程)

3/ 6 オーストラリア
3/20 マレーシア

4/ 3 バーレーン
4/24 サンマリノ

5/ 8 スペイン
5/22 モナコ
このマシンの実戦投入は、第5戦スペインGPからとなる可能性が高いと言われている。
開幕から数戦を走るF2004Mに搭載するエンジンが、F2005に搭載不可能な物であれば、
今季から2GP/1エンジンルールとなった事から、(レースでリタイヤしていない場合は)F2005は奇数GPで投入する事となる。

F2005の投入が第5戦スペインGPからとなると、地元サンマリノGPではF2004Mで走る事になるが、
もし他チームに対してF2004Mでは勝ち目の無い状態だった場合、F2005投入は早められるだろうか?
奇数の第3戦から投入するには、予定より1ヶ月も前倒ししなければならない。


概観から判る部分について。

・ノーズ先端の高さは、昨年と比べてさほど違いはない模様。

・フロントウイングはF2004Mと同じタイプを装着してある模様なので、現時点では然程注意深く観察する必要はないと思う。
 幅400mmのフォワードウイングは装着してある。
 ウイングは3枚構成で、メインウイングの下面はスプリッター付き。
 翼端板の上側ラインは切り欠いたタイプ。
 翼端板のサイドフィンは、今年になってトヨタ、ルノー、ジョーダンは付けていないが、今回のフェラーリは付けて有る。



・フロントサスは今年もノーマルな印象で、シングルキール式を継続。

・今年からより厳しくされたクラッシュテスト基準に対応する為に、モノコック側面を強化したとの事。

・前輪内側のディフレクターと、サイドディフレクターは昨年からの流用かもしれないが、
 サイドディフレクターの後端の高さはやや高めの物になっているかもしれない。



・サイドポッドのインテーク形状は、端側の下縁のRが尖った。

・チムニーはフィン状の細い物で、今は排出口は開けていないかもしれない。

・フェアリングフィンは昨年同様に、気流を内側へ寄せる傾斜角が付いている。
 フェアリングフィンの後部は、F2004M同様に翼端板が付いている。



・規定「14.3.2」で、ミラーの最小幅は150mmとされている。
(左図) 同じ150mm幅のミラーでも、角度をつければ、前方投影面積は小さくて済む。
角度をつけるには、ドライバーからミラーは左右へ遠ざけて設置する必要がある。

(下図) 恐らくこの理由もあって、昨年同様ミラーを左右へ離した位置に設置している。

ミラーの位置と空力については、昨年のF2004のページも参照



(左図:黄色の矢印で示す)
昨年から、サイドプロテクターの頂点はほぼ平らとなっている。
F2003までは、ヘッドレストとサイドプロテクターとの間の溝を低くしていた。



・ロープを通す穴はモノコック側面を貫通するタイプ。場所はやや後ろ側に空けてある。

・昨年のルノーの様に、インダクションポッドに装着したミッドウイングは前後2段構えとなった。
ウイング幅は狭めで、前側ウイングの翼断面はダウンフォース発生型。
後ろ側のウイングは、翼断面はほぼ水平翼だが、後ろへ下げる迎角で設置してある。



(注:左図は筆者が描いた適当なスケッチ)

・排気管周辺のデザインは新しくされた。F2005の実戦投入後この部分の詳しい形状の写真を入手できたら追加更新予定あり。

・排気管の後端は前寄りの位置にある。排気管の取り回し面ではやや苦しく、排気抵抗が増えそうだが、サイドポッドの空力に寄与する。
同じコークボトルラインの絞り幅なら、内部流のスペースが増して冷却面では有利となると思う。

左図の様にしてサイドポッドのカウル内部を観ると、
ラジエーターと排気管との間(1)にチムニー等を設けておきたい理由が解る。



(2)後輪手前下部のフロアパネルは、
半径50mmのRをつけて上方へ折り返している模様。

・テールライトの上面の左右には、赤い小さなフラップが付けられている。
この部分の規定は、幅150mmまで許されている。
翼端板が無い事から、フラップ両端で上から下へと巻き込む渦流を発生させて、
センターディフューザー内から排出されている気流に運動エネルギーを与える目的かもしれない。

(3)センターディフューザーのサイドフェンスは後方まで延びたタイプ。
今年からサイドディフューザーの高さが制限された事で、
よりセンターディフューザーで気流を引き抜く必要があるので、
サイドフェンスは距離がある方が気流引き抜きの安定性が良さそうである。


(左図:黄色の矢印で示す)
リヤウイングの手前にはフォワードウイングを備え、
その両端部分はやや下方へカーブさせてある。

これは、後輪周りの気流の影響で、リヤウイングへ向かう気流が
中央の区間と端の区間とでは流れ方が異なるので、
それに対して何らかしらの工夫をしているのではないだろうか。



・フェラーリ・チームが2004年から2005年へかけて最も重要な仕事は、
デザインチームをロリー・バーン体制から次の世代への引渡しであると思う。

発表時点でのF2005の空力効率は、昨年までよりも他の上位チーム(マクラーレンやルノー)との差が
縮まっているかもしれないが、実戦投入までにまだ開発が進む筈である。
実戦で、排気管の周辺や、サイドポッドのチムニー辺りはどの様な形となるだろうか?

全体的に特に無理して攻め込んだ造りには観えないので、
タイヤやエンジンの耐久性等、何の問題も発生しなければ やはり今年もフェラーリが最強マシンとなると思う。

シャーシ: F2005 (コードナンバー656)
フロント トレッド1470 mm (同)
リア トレッド1405 mm (同)
ホイールベース3050 mm (同)
全長4545 mm (同)
全幅1796 mm (同)
全高 959 mm (同)
ギアボックスフェラーリ製
縦置 7速+リバース
タイヤブリヂストン社
エンジン: 055
総排気量2997 cc
シリンダー数V型 10気筒
バルブ数40
シリンダーブロックアルミニウム キャスト
インジェクション
& イグニション
マグネッティ マレリ社

注:スペックはチームの発表値。

( )内は昨(2004)年の発表値との比較。

つまり、発表値は読む価値の無い事が判る。
レギュラー ドライバー
ミハエル・シューマッハ
ルーベンス・バリチェロ

テスト ドライバー
ルカ・バドエル
マルク・ジェネ

(ここまでの最新更新日:2005/ 3/18


[Rd.3 バーレーンGP 4月 1日(金曜)の写真から]

今回から新車「F2005」を実戦投入した。
F2005発表時と同じく、幅400mmのフロント・フォワード・ウイングを使用している。
F2004Mではフロント・フォワード・ウイングを使用するにあたりノーズコーン全体をかなりボリュームを持たせた形状としていたが、F2005では普通サイズのノーズコーンとなっている。

フロントウイングも更に開発を進めたタイプを投入した。前から見た湾曲のラインが旧型とは異なる。
新車は旧車よりも車体全体でのダウンフォース発生量が増している筈なので、フロントウイングもより大きなダウンフォースを発生するタイプが必要となる。

翼端板のサイドフィンは、前側の水平板のみ装着した。跳ね上げるフィンは装着していない。
F2004M同様、翼端板の下面にはトンネルは使わず、水平板としてある。



ピット内での作業中に、フロントサスを最もリバウンドさせた状態の時、トーションバー先端のプリロード設定ネジがノーズ上面へ飛び出ている事が確認できた。
これはフェラーリが1998年から採用し始めたフロントサスの構造で、縁石を乗り越えてから着地するまでの間や、路面に窪みがある箇所で、足(フロントサス)を下へ延ばして、少しでも路面を掴んでいられる時間を失わない様にする為と思われる。



サイドディフレクター後端部分に、水平プレート追加した。端は規定内(半径50mm以下)のRで折り返しをつけてある。
これはサイドディフレクター下側へこぼれて巻き込む気流を、その後方の車体下面の流れ方へより良く働く様に調整した物と思われる。
昨年モナコGPからのルノーや、今年からレッドブルがこの様なプレートを使用している。

排熱処置として、右サイドポッド側面の、ラジエーターチムニーとフェアリングフィンとの間の部分にシャークルーバーを開けた。

予想通り、サイドポッド上に小型ウイングは装着した。

注目のエンジン排気方法は、F2005発表時と特に違いは確認できなかった。



Rd.4 サンマリノGPの写真から (2005/ 5/04更新分)

サイドディフレクター両端のプレートは、ルノーの形状をほぼコピーした物を使用した。

リヤの回転式ダンパー・ユニットを納めるカウルの膨らみ部分は、穴を開けてトーションバーが数cmほど後方へ飛び出していた。
フェラーリは2002年頃から、リヤに長いトーションバーを使う際にはこの様になっている。
トーションバーは、径が同じならば、長さは長い程軟らかいスプリングとなる。
イモラ・サーキットは多くの箇所で縁石を乗り越える必要があるので、
セットアップでサスのスプリングは軟らかめとなっていたと思われる。





(ラジエーターの配置を示す。
内部の仕切りは想像図)
F1速報誌バーレーンGP号で、ボディ上面のカウルを外した状態での写真が掲載されており、 左サイドポッドのラジエーターは、上下で2つに分割して「くの字」にレイアウトしてある事が確認できた。
上側ラジエーターの向きは、チムニーから排出するのに都合が良く、
下側ラジエーターの向きは、サイドポッド側面下部を絞り込むラインと都合が良い。



エンジンのエアボックス外側には、恐らく温度センサーと思われる物が数枚貼り付けてあった。
車体の空力上の理由から、排気管を車体中央へ寄せて取り回してあるが、吸気温度が上がるとエンジン出力が低下するので、 損得が計算通りとなっているかエアボックスの温度環境を実測しているものと思われる。



ウイリアムズ同様、テールライト上方に幅150mmの追加フラップを装着した。
元々F2005発表時点でテールライト上面から横へのフィンは有ったので、単純にウイリアムズを観て真似をしたのでは無いかも知れない。
テールライト横のフィンと一体化したラインとなっているので、ウイリアムズよりも空力的に洗練されている形状であると思う。

(ここまでの最新更新日:2005/ 5/21


Rd.6 モナコGPの写真から (5/22更新分)

上下2段構成だったフロント・フォワード・ウイングは、上側のウイングが撤去された。



前輪内側のアッパーアームの上方に、新たな水平フィン状のパーツが付けられたのが興味深い。
これはフロントウイングが跳ね上げた気流の制御板だと思われるが、
このフィンは車体側ではなくアップライト側に装着してあるパーツなので、
「操舵時にフィンとアッパーアームとの位置関係が変化する」ので、それがこのフィンの狙いかもしれない。
操舵時に、内側タイヤのフィンはアッパーアームに対して元の位置よりも前進し、逆に外側タイヤのフィンは後退する。
これにより操舵時には、左右のフロントウイングの気流の跳ね上げ具合が僅かながら変化すると思われる。

尚、規定11.4「エアダクト」では、ブレーキダクトの設置が許可される範囲の大まかな内容は、
ホイール中心線から上下に160mm以内で、
ホイールの内側部分から車体方向へ120mm以内となっている。

筆者が確認できた写真からは、この新しい水平フィン状パーツに「開口部」は確認できなかったが、開口部が無ければ「ダクト」ではない。
フェラーリのエンジニアは、このフィンは可動空力部品を禁止するルールには触れないと判断したという事となる。



サイドディフレクターの両サイド部分には小さなプレートが増設され、この部分のプレートは上下2段式となった。



コクピット開口部前端辺りのモノコックの角には小さなコブがあるが、これは何だろうか?


Rd.6 モナコGPの写真から

前輪のアップライトに装着した水平フィン状のパーツは、
厚さは薄いがダウンフォース発生型の翼断面となっており、且つ僅かに迎え角がつけられていた。
翼端板は装着しておらず、翼端形状は切り落とした状態となっている。

(ここまでの最新更新日:2005/ 5/29


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