フェラーリ F2007   text & illustration by tw  (2007. 1.16)


1月15日、フェラーリの2007年用マシン、「F2007」が発表された。
写真は、F1racing.netF1Live.com等を参照。
以下、概観から筆者の私見を記す。
各部パーツの呼称については、[各パーツの名称]ページを参照。


これまでフェラーリのフロント・サスペンションは、保守的なセンターキール式を貫いてきたが、
今年からついに、2005年からマクラーレンが登場させ成功したゼロキール・コンセプトを導入した。
実際にはF2007の前側ロワアームはミニ・ツイン・キール状となったモノコック下面両端に取り付けられている。
F1マシンでは空力がマシン性能の大部分を占める為にこういった形のサスペンションが登場しているが、
これまでビーグル・ダイナミクス面で保守的だったフェラーリがこの形式でブリヂストン・タイヤを使いこなせるか注目される。



サイド・ディフレクターは昨(2006)年終盤に登場した、上のラインが多段に切り取られた形状。
サイドポッド側面下部は幅をより狭めた模様。
サイドポッド上面は多枚のシャークルーバーが切られ、ラジエーターからの熱気を排出し、
且つサイドポッド上面の流速をコントロールしている。これは2005年のルノーと同様のコンセプトだと考えられる。

写真では未だよく確認できないが、エンジンカウル後端は三角形の排出口となっているかもしれない。

フェアリングフィンとその下側にあるシャドーフラップの間隔は近い。

リヤ・ホイールの外側には、昨年に引き続きカウルを装着している。

センターディフューザーも昨年同様、テールライトを覆う様にした2階建ての構造となっている。



F2007のホイールベースは昨年型の248F1よりも長くなったという。
ホイールベース値は、マシンの回頭性、挙動安定性、限界コーナリング速度、
ボディワークのレギュレーション下における空力面の影響など、多種多彩な要素がある。
その為、ホイールベース値はマシンの全体的なコンセプトから導かれている筈である。



記事に拠れば、ここ数年フェラーリF1チームは、フィアット・リサーチセンターから大きなサポートを受けて
シミュレーション、製造、開発が行われているという。

そして2007年のテクニカル・レギュレーションはクラッシュ・テスト(前方衝突、側面衝突、後方衝突)の
基準が強化された為に、モノコック(サバイバル・セル)の重量は、10kg弱ほど重量が増したという。

カーボンファイバーで製造されたギア・ボックスは昨年よりも幅が狭くなっているとの事で、
これは現代のF1では空力面で多大に寄与する。



記事に拠れば、今(2007)年のエンジンのレギュレーションでは、
今年も昨(2006)年と同じエンジンを搭載しなければならず、
3月1日以降はエンジンの仕様変更は認められないとの事。
その為エンジニアは、周辺パーツや、燃料、潤滑油などの開発を進める事になる。

且つ、今季のルールでは最高回転数は1万9,000/分に制限しなければならず、
その為、エンジニアはトルクカーブの見直しと最適化が行われている筈である。

そしてこれはエンジンの発熱特性が変わる事を意味し、マシンの冷却面に影響する為、
このエンジン・レギュレーションは、シャーシ側にも影響を及ぼす。
それらは、ラジエーター、ウオータータンク、オイルタンク、冷却に影響する空力面などである。



そしてトランスミッションは、最早現在のF1マシンではスタンダードとなる、
シームレス・ミッション(クイック・シフト・システム)を導入しているという。




(シームレス・ミッションの予想図)



(ノーマル・ミッション)

このシームレス・ミッションについては各メディアの記事で推測が書かれており、
次に綴る内容は筆者の発案ではないが、各記事の推測をまとめると、
恐らく、あらかじめ次にシフトするギアとドッグギアを接続させておき、
ラチェット機構(自転車の様なワンウェイ・クラッチ)を利用して高速側のギアを空転させ、
シフトチェンジ時に低速側の接続を抜き、空転時間をゼロとするシステムであると想像される。

そしてここからは筆者の考えだが、ギア・チェンジ時間をゼロにする事が可能となると、
フル・ブレーキング時の制動距離を短縮できると考えられる。
何故ならばギア比が変わるという事は、タイヤへ加わるエンジンブレーキの強さも変わるという事であり、
ギア・チェンジ時の空転時間が長いと、制動力が不安定となると考えられるからである。



空力開発は常に進められ、これは毎シーズン恒例の事だが、
開幕戦では現時点とは異なる最新状態のフロント・ウイングを投入すると思われる。

F2007 開発メイン・スタッフ
シャーシ部門責任者アルド・コスタ
チーフデザイナーニコラス・トンバシス
技術部門責任者ティジアーノ・バッティスティーニ
空力部門責任者ジョン・イレイ
エンジン部門責任者ジル・シモン
マシンパフォーマンス部門責任者マルコ・ファイネロ
研究開発(R&D)部門責任者シモーネ・レスタ
クラッシュテスト責任者ダビド・パレッティ

シャーシ
全長4545mm (注:公表値)
ホイールベース3135mm (注:公表値)
全幅1796mm
全高959mm
フロントトレッド1470mm
リアトレッド1405mm
冷却水、オイル、
ドライバーを含んだ重量
600kg
ホイール(フロント及びリヤ) 13インチ
ミッション7速+リバース
ブレーキ・システムブレンボ社製
エンジン
名称056
排気量2.4リッター
気筒数8
ピストンボア98mm
バルブ数1気等につき4バルブ
シリンダーブロックアルミ鋳造製
バンク角90度
合計置換2398cm3(立方センチメートル)
重量95kg未満
インジェクション
&イグニッション
マグネッティマレリ社製
燃料シェル社製 VパワーULG62
潤滑油シェル社製 SL-0977

(このページの最新更新日:2007. 1.16


Rd.9 イギリスGP  (7/12更新)

前輪ホイールの外側に、新型のホイール・カウルが装着された。
筆者が確認できた写真では、停車時にカウルの下部だけにブレーキの熱気排出口があり、
その排出口には少なくとも2枚のセパレーターを備え、排出流をコントロールしていた。

このカウルの装着手法は興味深い。
決勝レースのテレビ映像では、タイヤ交換の際にナットを駆動するエアガンには、
前輪カウリングと大体同じ径の透明キャップが装着され、
ナット駆動時に、エアガンのキャップはカウルと触れない程度の隙間を持っていた様だ。
そして新しいタイヤ&ホイールに交換した後に、カウルがエアガンで装着されていた。

ホイールをカウリングする目的は、タイヤの外側を流れる空気がホイールの内側のへこんだ区間に回り込む事で起きる余計な渦流の発生を防ぐ為と考えらえる。
尚、後輪ホイール外側のカウルは、従来同様ホイールと一体となっている様で、
ブレーキの熱気排出口は車軸を中心に最小限の径で開けられている。



Rd.10 ヨーロッパGP(ドイツ・ニュル)予選の映像から (7/22更新)

前GPから投入された前輪外側のホイールカウルは、走行中に無回転状態である事が確認できた。
このカウルは、ブレーキの熱気排出口を、斜め下部に開けてある。
この部分からブレーキの熱気を排出している理由は、
タイヤに当たる気流はタイヤの回転により下方へ向けられる為、
このタイヤ側面下部の速い渦流に乗せて排出したい考え方なのかもしれない。

通常、前輪の車軸は、ベアリングを介してアップライトで支持され、
車軸とブレーキディスクとホイールは一体となって回転するが、
前GPからのフェラーリの構造は、車軸はアップライトに直接固定され、
車軸にベアリングを介してブレーキディスクとホイールを装着している事が想像できる。
その場合、ドライブシャフトで車軸を回転させる必要がある駆動輪では、無回転ホイールカウルは装着できない。


ピットで待機中のマッサ車は、モノコック上面前端に、ネジの頭が飛び出している事が確認できた。
これはフェラーリが1998年から採用し続けているフロントサスの構造で、
トーションバー スプリングの固定方法を工夫する事で、リバウンド ストロークを大きくとれるアイディアである。
この工夫により、路面の窪みで前輪が浮き上がっても、早い段階で再び路面と設置させる事が出来る。



Rd.11 ハンガリーGPの映像から (8/11更新)

前輪外側ホイールカウルの上部に、水平フィン(やや後傾)が装着された。
幅はほとんどないのでガーニーフラップの様な役割をしているのかも知れない。

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