アイドリアン・ニューウェイ、マイク・コフラン、ニール・オートレイの指揮による体制で 開発された2005年用「MP4-20」は、1月24日に発表されテスト走行も開始された。 チームに拠れば、2004年最終戦以降のテストでは、 MP4-19Bで走行した距離はおよそ1万1,000km、約8,000リッターもの燃料を消費したとの事。 ノーズコーンが、だいぶ幅広い物になった。幅広ノーズは昨年も中盤からテストしていた。 スラントして幅の広いノーズ下面で、フロントウイングの後流になるべく沿う様にしたい考えかと思う。 スラント式で前後長が短めなのは昨年から引き続いているが、 ノーズ先端の高さは高くなり、ノーズ下面のスラント度合いは弱まった。 フロントウイング形状は今のところ昨年と同じ様な形で、 50mm高くなったのでダウンフォースが足りない様に思う。 ウイングの高さを規定内でもっと下げられるので、開幕前に変わるだろうか。 翼端板横のフィンもまだ付いていない。 前輪内側ディフレクターは、下部で段付きとなって横に広がっている。 これで気流がディフレクターの下方へのこぼれ度合いが大きく変わると思う。 フロントサスがウイリアムズの様に、車体側からタイヤ側へ下がる向きとなり、 これでアッパーアーム前側は、ノーズ上面に近い位置になった。 マクラーレンはこの数年、フロントのサスアームは水平に近かった。 正面から見たアームの角度は、ロールセンターやキャンバー変化を決める要素の一つ。 車体側からタイヤ側へ下がるアーム向きのジオメトリーは、 ミシュランタイヤの独特な構造に関係があるらしい...? プッシュロッドは、角度が立っている方が作動性が良く、 且つ、同じタイヤの上下動でもプッシュロッドが作動量も大きくなるので、 昨年よりもそうする為に、モノコック上面に膨らみを設けてプッシュロッドを立てている。 (図は、昨年のジャガーのフロントサスのページを参照。) モノコック上面に膨らみを設けてプッシュロッドを立てると、ピッチダンパーを上側に置けないので、 ピッチダンパーは、恐らく立体ロッカーでプルストロークさせるタイプか、 またはT型アンチロールバー式としてそれに接続するタイプかと思われる。 今年もサイドディフレクター式の空力だが、大きく変貌を遂げてMP4-20の要注目ポイントとなっている。 昨年ルノーがモナコGP辺りから、サイドポッド両端の前端から、前方に斧型プレートを突き出し、 そして終盤の日本GPからウイリアムズがそれに厚みを付けた空力を登場させたが、 今回のマクラーレンはそれをサイドディフレクターと組み合わせる形で空力デザインされた。 これでフラットボトム規定下でもディフレクターを斜めに倒すデザインとできた。 昨年からの路線で、サイドポット側面を下方へ斜めに大きく絞ってあり、 MP4-20のサイドポットとディフレクターとの間を、斜め後ろ方向から観ると、 とても大きな空間を作っているのを確認できる。 フェラーリにつられてか、バックミラーを左右へ離すタイプに戻ったが、今回はかなり離した。 モノコックからステーを長く横へ伸ばしている。 綺麗な気流中にバックミラーを置くと気流を乱してしまうので、 あえて前輪からの乱流中にミラーを置いたのかもしれない。 ミラーを左右へ離すと、ドライバーが後方視界を得るにあたって ミラーに角度をつける事となるので、これで前面投影面積を減らせるメリットがある。 サイドプロテクターの側面は斜めに膨らんでいるタイプ。 これは空力的には、前輪からの乱流の整流、車体上面の圧力、ミラーの後流の整流、といった事に影響する部分に思う。 勿論、強度面にはそのまま結果として現れる。 サイドプロテクターとエンジンカウルとの間に溝はあるが、その後の頂点は同じ高さとなって合流した。 給油口のフタの上に、僅かに膨らんだ線がある。 ロープを通す穴はマクラーレン式を継続。 今回もインダクションポッドのセパレーター部分には小さな穴が開けてあるが、内部の冷却用なのだろうか? サイドポッド上には、チムニーを復活させた。元々はマクラーレンが始めた物。 チムニーは斜め外側へ出し、上へ開けているタイプ。 昨年辺りからトレンドとなっている3次元に斜めに絞るサイドポッドの形式には、 気圧の分け目として必要なのかもしれない。 今はサイドポッド上に小型ウイングが無いが、カウルには交換できる分け目の線が見えるので、後に装着するかもしれない。 フェアリングフィンの最下部は高め。 これと逆のフェアリングフィンの跳ね上げが大きい場合には、サイドポッド上の小型ウイングが必須となると思う。 エンジン排気はチムニーを継続して、先日発表されたBARの様に、 チムニーの内側とエンジンカウルとの間から熱気を排出している。 リヤサスは、昨年まではトラックロッドがドライブシャフトを内包していたが、 今回のマシンではドライブシャフトは見える。 (筆者の観られた写真の中ではトラックロッドがどこにあるかは未だ確認できていない。) フェアリングフィンから続く後輪内側のフェンスには、 リヤウイング手前のフォワードウイングを装着している。 このフォワードウイング形状は、昨年のザウバーに似ている。 テールランプ前面は跳ね上げる様な形で、ランプは前後に薄い。 その下にはジャッキアップに使う金属が見えるので、フックレスとはなっていない。 リヤウイングの翼端板は、正面から観ると上下方向のカーブがある事が判る。 リヤのアッパーウイングは、今年も左右の下方を持ち上げたタイプ。 ここ形状は、翼端流の渦を軽減させる為と思われる。 アッパーウイングのステーは2本。 アッパーウイングの後ろ側では、やはり翼端板を切り欠いてある。 横から観て、翼端板の後輪にかかる箇所を無くしている。 現時点で筆者が観た写真からの印象では、 やはりこれまでに発表されたトヨタ、ザウバー、BARと比べると、 この中では最もマクラーレンが空力効率の高そうなデザインであると思う。
(このページのここまでの最新更新: 2005/ 1/25)
[2005/ 2/20追加更新分] リヤサスのトラックロッドは、ドライブシャフトの後ろに有る。 昨年まではトラックロッドを空力利用する為に前後長が長い物だったが、 MP4-20では単なるロッドとしての大きさとなった。 マクラーレンは2000年頃から昨(2004)年までは、規定の範囲内でトラックロッドを空力利用していた。 それはサイドディフューザー、トラックロッド、リヤのロワウイングとを連係させて空力を向上させる方法だが、 トラックロッドをドライブシャフトと重なる高さとする必要があり、サスペンション設計自由度は制限される。 今(2005)年からサイドディフューザーの高さがRP(車体底面)から125mm以内に制限された事で、 この辺りの空気の流れは大きく変わっている筈なので、 今回のMP4-20でトラックロッドを単なるアームとしたのは、トラックロッドの空力利用による損得を考慮した結果と思う。
(ここまでの最終更新日: 2005/ 2/20)
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[Rd.1 オーストラリアGP (メルボルン市街地) 3月 4日(金曜)の写真から] 昨年の年間順位から、今年は金曜にサードカーを走らせられる。 今年から2GP/1エンジン規定となったのでサードカー使用は相当有利な条件である。 冬のテストから登場した、鬼の角タイプのミッドウイングを装着。 今年もエンジンの排気管が長く、排気チムニーから後方へ飛び出ている。 発表会では無かったサイドポッド上の小型ウイングは、予想通り実戦では装着した。 冬のテストから登場した、コークボトルの縦ベーンも装着。 [Rd.2 マレーシアGP (セパン) 3月18日(金曜)〜19日(土曜)の写真から] 排熱処置として、ラジエーターチムニーは前後に長く、幅の細い物を装着した。 その内側のサイドポッド上面にシャークルーバーを開けた。 エンジンの排気管は相変わらず長い。 引き続きツノ型ミッドウイングを装着した。 |
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