マクラーレン MP4-22   text by tw  (2007. 1.16)

2007年 1月15日、マクラーレンの2007年用マシン「MP4-22」が発表された。
写真は、F1racing.netF1Live.com等を参照。
以下、MP4-22の概観から筆者の私見を記す。
各部パーツの呼称については、[各パーツの名称]ページを参照。


ノーズコーンは昨年同様、低く非常に細身な形状。
厳しいクラッシュ・テストをパスする為に、見た目とは裏腹に重量は重いかもしれない。

フロント・ウイングは3枚構成だが、今回のMP4-22で用いられた新しいアイディアは、
ウイングの3枚構成の内、中間の2枚目のウイングをノーズからステーで吊っている事である。
先頭にあるメイン・ウイングは中央部が低く下がっている為、
その1つ後ろに有るフラップ(先頭ウイングよりも位置が高い)に接続すればステーの長さを短縮できる。
ただし強度上、中間のウイングには従来のメイン・ウイング並みの厚みが必要となる。
代わりに、先頭のメイン・ウイングは厚みを薄く済ます事ができる。
先頭のウイングは、中間のウイングの中央から小さなステーで吊られて補強してある。

規定で許可されている範囲で、先頭のウイングの中央部は前進した形状。
フロント・ウイングの最も後ろのフラップの後端は、翼端板の後端辺りまで有り、フロントウイング全体の前後長は長い。
先頭のウイングは前後長が短めで、中間のウイングは強度上、前後長が長めとなっている。



フロント・サスペンションは昨年に引き続きミニ・ツイン・キール形式となっている。

前輪内側のディフレクター底面プレートは、フロント・ウイングの翼端板の様にトンネル状となっている。

昨年同様、ノーズコーンの側面から既にアッパーアームへのラインが始まっている。
規定で許されている範囲でアッパーアームは前後へと延長してあり、
アッパーアームは、前側アームと後ろ側アームの距離が接近している。

昨年同様、プッシュロッドの車体側の接続部は高い位置にある。
モノコック上面のサービスホールの形状からしても、2004年のMP4/19Bと同じ内部サス構造となっていると思われる。



モノコック上面でコクピット開口部の前端両側は、
視界確保の為に、昨年のMP4-21では気流が乱れてしまう段差があったが、
それが昨年のフェラーリの様に、今年のMP4-22ではゆるやかに降りる形状に改められた。
レギュレーション上、サバイバル・セル(モノコック)の側面の高さは、
最低でもリファレンスプレーン(車体底面)から上方に550mmまでなくてはならない。
昨年も今年もフェラーリやマクラーレンのフットボックス上面の高さはリファレンスプレーンの上方550mmよりも高いが、
視界確保の為に、コクピット開口部の前端から後方へかけて一旦RP上550mmまで低くなり、
そしてサイドプロテクターの区間からまた高さが増す様になっている。



サイドポッドのエア・インテークの手前のモノコック側面はやや立体的な形状で、
モノコック側面の上部が狭く、下部が広がってゆく形状となっている模様。

サイドポッド上面両端にある、ラジエーター・チムニー兼フェンスは、前後長が長い。
これはサイドポッド上面の高圧流を、低圧であるサイドポッド側面へと吸い込まれない様にする為である。
この手法は、筆者が昨年の9月16日に本サイトで公開したF1マシン・デザインと同じ考え方の筈である。

MP4-22ではフェンスの発生部分はサイドポッド前端近くから始まり、
前半部分では厚みの薄いフェンス状で、
後半部分がラジエーターの熱気排出を目的とした幅のあるチムニー(煙突)となっている。



後輪前部の高圧を軽減する縦のベーンは車体内側寄りにあり、サイドポッド側面の気流をサポートしている。
この縦のベーンは車体外側に設置した方が後輪前部の高圧を軽減する効果が高くなるが、
その場合は気流変動に敏感になってしまう代償がある。

エンジン・カウルの側面は、後部へかけて幅を狭く絞り込んであり、
且つリヤ・ボディは低くされ、所々に内部パーツを納めるバルジ(膨らみ)が設けられている。

リヤ・ウイング手前のフォワード・ウイングは前寄りの位置に設置された。

リヤ・ウイングは、ギアボックス上面から2本のステーを立ててアッパー・ウイングを支持する形式となった。
これによりロワ・ウイングは強度に囚われずに自由なデザインが可能となる。
ロワ・ウイングは左右2つのブーメランの様に前後へ湾曲している。

クラッシャブル・ストラクチャーの上面は丸みを帯びた三角形の断面となっている。
そしてロワ・ウイングの気流と同調させる為、
テールライトの横側には、規定で許される範囲内でフラップを備えている。

リヤ・ウイングの翼端板の面は、非常に微妙で巧妙なカーブを描いている。
上端はアッパーエレメント下面からの排出を促進する為に広がり、
全体的には後輪の後方へ気流を誘導する形状となっている。
現状の規定では、リヤ・ウイングの翼端板の幅は20mm以内でデザインする事が許されている。

(このページの最新更新日:2007. 1.16


Rd.10 ヨーロッパGP(ドイツ・ニュル)予選の映像から (7/22更新)

マクラーレンは2005年開幕戦から使用し続けてきたバイキング型のミッドウイングを、このGPから取り外した。
このミッドウイングの効果は、その装着部分での気流の乱れを整え、
そしてリヤウイングへ都合の良い角度で気流を供給する目的であったと考えられるが、
その代償として、装着したミッドウイングの摩擦抵抗の増加により、
リヤウイングへ流れる気流の運動エネルギーが多少減少してしまう事が考えられる。

マクラーレンも流行に習い、フロントウイングを上下2段構成とし、
モノコック上面両端にコントロールウイングを装着する様になっている。
こういった空力開発から、ミッドウイングの装着必要性のデータが変わっているのかもしれない。

Site TOP マクラーレン index