フロントウイングはエレメント数が多い。
本来、間隙フラップ式とする意味は、ウイング下側の気流剥離を防止する為だが、
これだけ多くの間隙フラップが必要なのだろうか? それとも別の目的があるのだろうか?
もし必要以上に間隙スリット数が多いと、無駄に干渉抵抗が大きくなってしまう事が考えられる。
干渉抵抗とは、簡単に述べると、狭い隙間に気流が通過する際に流れ難くなってしまう現象だ。
フロントウイング翼端板は複雑な形状となり、文章では記述し辛い。(写真参照)
昨(2009)年からフロントウイングの最大幅が前輪の最大幅と同じとなった為、
フロントウイング翼端板の役割は、ウイング両端の気流を前輪の外側へ跳ね飛ばす様になった。
MP4-25は、他チームのマシンとは異なるアプローチで前輪に当たる気流の制御を行っている様だ。
タイロッドは低い位置、ロワアームよりやや上にある。
ロワアームと同じ高さにするよりも空気抵抗は大きくなるが、
タイロッドが車軸に近い高さで操舵する為、操舵系の設計自由度は大きくなる。
プッシュロッドの車体側取り付け位置は高めにある為、
ピッチコントローラー(=サードダンパー)は恐らく立体ロッカーの下側に置かれている事が推察できる。
ブレーキダクトは、今(2010)年のフェラーリとは異なり、高い位置にある。
フェラーリF10はフロントウイング下側の気流をダクトに取り込んでいるのに対し、
MP4-25はフロントウイング上側の気流をダクトに取り込んでいる。
サイドポッドは昨(2009)年のレッドブルに習い、上面の高さを後部へ向けて非常に大きく落とし込んであるが、
サイドポッド上面前端は気流を一旦かなり上方へ持ち上げる形状となっている。
これではサイドポッド上面に大きな揚力が発生してしまう筈で、筆者はこのデザインに非常に懐疑的だ。
ただしリヤビュー・ミラーはサイドポッド前方に配置してある為、
盛り上げたサイドポッド前端上面で、ミラー後部の乱流を整流し、且つリフトを軽減する効果はあるだろう。
サイドポッド両端前側の縦のベーンは上部しか無く、今後のアップデートで下端まで延長されるかもしれない。
サイドポッド側面後部の下部の絞込みは異常なくらいで、これはエンジンの冷却要求量が低いからこそ達成できるデザインだ。
この狭く絞り込む効果は、車体底面へ横側から進入しようとする(=グランドエフェクト効率を低下させてしまう)気流の軽減、
リヤ・ディフューザーとリヤウイングの効率向上、後輪前部の高圧の軽減などがある。
リヤウイング・ステーは中心に1本で、2本式より干渉抵抗が少ない。
リヤウイング翼端板の高圧排出スリットは細かく6つも切ってある。
これでは干渉抵抗が大きい筈だが、それよりもスリットの効果による翼端渦の軽減の方が空力効率が良いのかもしれない。
尚、MP4-25の空力学部門責任者はジョン・アイリーで、
彼はフェラーリ空力学部門の元責任者であったが、昨(2009年7月頃)にフェラーリから離脱し、マクラーレンに加入した。
マクラーレン・メルセデス MP4-25 スペック | |
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シャーシ: | |
タイヤ | ブリヂストン社製 |
ホイール | エンケイ社製 |
ブレーキ | キャリパー、マスター・シリンダー、アケボノ社製 |
ダンパー | Koni社製 |
ステアリング | マクラーレン社製パワーアシスト |
ボディワーク | Sikkens製品を利用したアクゾノーベルのカウル塗装 |
無線 | ケンウッド社製 |
バッテリー | GSユアサ・コーポレーション |
トランスミッション: | |
ギアボックス | マクラーレン製カーボンファイバー・コンポジット |
クラッチ | カーボン製 |
ギア数 | 7速前進、1速リバース |
ギア選択 | マクラーレン製シームレス・シフト、手動フライ・バイ・ワイヤ |
エンジン: | |
タイプ | メルセデス ベンツ社製 FO 108X |
排気量 | 2.4リットル |
重量 | 95kg (FIA規約が定める最低重量) |
シリンダー | 8 |
最高回転数 | 18,000rpm (FIA規定によるリミッター付き) |
バンク角度 | 90度 |
ピストン径 | 98mm |
バルブ数 | 32 (=1気筒あたり4バルブ) |
燃料 | エクソンモービル製、無鉛 (5.75%バイオ燃料) |
スパークプラグ | NGK製 |
潤滑油 | モービル1 |
極論してしまえば、ノーズ先端の高さは車体底面へのエネルギーの入力であり、
入力が大きい程に、出力(ダウンフォース)は大きく出来る条件が達成される。
車体底面へのエネルギーの入力が安定していれば、少ない空気抵抗で大きなダウンフォースを得る事が出来るが、
入力が少なくても気流変動量が安定していれば、
結果的に出力も安定(=変動量が少ない=ダウンフォース発生量が安定する)と云う事になる。
結論として云うならば、ノーズ先端の低いマシンは、
ダウンフォース最大発生量が少なくても、多少、少いレベルでも常に安定したダウンフォースを維持できると云う事になる。
筆者が観る限り、「MP4-25」には多くの開発の余地が在る。 今(2010)シーズンのマクラーレンの開発進行は要チェックだ。
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