フェラーリ F2008   text & illustration by tw  (2007.12.31〜)


2008年のF2008を語る前に、2007年度のF2007で特徴的だった事は、ロングホイールベースの車輌コンセプトであった。
現行のテクニカル レギュレーション下で、ホイールベースを長くとる事には2つメリットがある。
まず1つは、車体に前後方向の荷重移動が発生した際のグリップ力の変動及び減少を軽減できる事。
もう1つは、前輪を車体から前方へ移動させる事で、規定内でサイド ディフレクターやサイドポッドのデザインの自由度が増し、車体底面の空力性能開発にアドバンテージをもたらす事である。

記事に拠れば、フェラーリのチーフデザイナー、ニコラス・トンバジス(39歳・ギリシャ人。2006年初めにマクラーレンからフェラーリへ復帰した)によると、F2008はF2007の進化系となっているとの事。
トンバジスは、F2008はF2007よりホイールベースが短いのが特徴だとスペインのDiario As紙に明かしたとの事。
これは、前輪を車体から前方へ移動させる事で授かる空力開発面の優位度よりも、
ホールベースを短縮する事によるクイックな挙動のライン取りをする事を可能とした方が車輌性能向上に寄与すると判断されたと云う事だと考えられる。

(左図) 車体を横から見た、ホイールベースと前後方向の荷重移動の違い。
同じ力のGが加わった場合でも、車体重心高と前後輪を繋ぐ三角形の角度の違いで、 荷重移動の力の加わり方に違いが出る。

ホイールベースが長い方が制動距離を短縮でき、且つ、ブレーキングしながらのコーナリングでも高い車速を維持できる。
ホイールベースが短い場合は、Gが加わった際のグリップ力の限界値は低くなるが、クイックな挙動で車体の向きを転換する事ができる。

フェラーリの両ドライバー、新チャピオンのキミ・ライコネンと、フェリペ・マッサの2人で、
ホールベース短縮の変更によってどの様な差が生まれるのか興味深い。
筆者の私見では、ライコネンは常に前輪のグリップ力を最大限に発揮させながら、後輪のグリップ力を常に限界領域でコントロールするドライビングの手法の様に見受けられる。
一方でマッサは、後輪の荷重の加え方のコントロールでマシンの向きと回頭性を制御している様に見受けられる。
筆者の私見が実際と合致している場合ならば、単純にこれだけを考えると、ライコネンの方がショート ホイールベース・コンセプトに向いていると考えられるが、実際にはどういった現象が起きるのか興味深い。

(このページのここまでの最新更新日:2008. 1.04



2008年1月06日、フェラーリの2008年用マシン、「F2008」がフェラーリの本拠地マラネロで発表された。
これを綴っている時点では筆者はF2008の写真を3つしか入手できておらず、
何故かネット上にはF2007の写真ばかりが掲載されている。
以下、現時点で入手できている新車F2008の3つの写真から判る部分について綴る。

フロントウイングの上段フラップは、昨年のトヨタの様にノーズの先端と融合させた滑らかな形状となった。
この変更による発生ダウンフォース発生量に大差は無いと思われるが、気流変動に対して挙動が穏やかになるかもしれない。

安全面の新規定で、サイドプロテクターは高い部分がより前方へ延長され、横から見て角ばった形状となった。
これによる気流の乱れの影響を受けない様に、エンジンのエアインテーク下端はやや高い位置とされた。
それによりエンジンのエアインテーク下端とヘッドレスト上面との間の空間が大きくなった事から、
車体を吊り上げる際にロープを通す穴は、マクラーレン式となった様だ。
これによりエンジンカウル側面の気流を乱さない様にできる。

ヘッドレストとサイドプロテクターとの間の溝が復活した。
大きく迫り出したサイドプロテクターとヘルメットの間を流れる気流は、この溝を通らざるをえない。
この溝が無ければヘルメットの横の気流は大きく上方へ持ち上げられ、リヤウイングへの後流を乱してしまうだろう。

サイドポッド上面は全域に渡ってシャークルーバースリットが開けられている。
これは2005年にルノーが打ち出した手法と同じ様な考え方のものだろう。

排気管エンドは長くされた様だ。これはエンジンの出力特性に影響する。

前後ホイールの外側には、昨年から引き続きカウリングがされている。

F2008の車体の概観は昨(2007)年度のF2007と特に大きな違いは無い様に見受けられる。

(このページのここまでの最終更新日:2008. 1.07


1月07日にF2008のシェイクダウンが行われた。写真は、GPUpdate.net等を参照。
以下、車体の概観から筆者の私見を記す。
各部パーツの呼称については、[各パーツの名称]ページを参照。

ノーズコーン上部両脇のダミーカメラは翼端板が着けられ、積極的に空力利用されている事が窺える。

車体を吊り上げる際にロープを通す穴は、マクラーレン式となっている事が確認できた。
マクラーレン式については
このページを参照。

後輪手前のフェアリングフィン下側の縦のベーンは縦に湾曲した形状で、
上部が内側に、下部が外側にカーブして建てられている。

(このページのここまでの最終更新日:2008. 1.08


2008年 1月08日にこのページで、
「車体を吊り上げる際にロープを通す穴は、マクラーレン式となっている事が確認できた。
 マクラーレン式についてはこのページを参照。」
と書きましたが、
実際には従来からのモノコック側面を貫通させるタイプである事が確認できましたので訂正します。

(ここまでのこのページの最終更新日:2008. 7.12
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