2008年用 F1マシン空力デザイン by tw デザイン日:2008年 9月06日〜9月10日
 Web公開日:2008年 9月11日(木)

筆者による2008年用F1マシン空力デザインスケッチ。
これは筆者の作成した、F1マシンデザイン・テンプレートをA4紙にプリントアウトして描いた。
緑や青の線はボディワーク規定の範囲線を示す。

当然の事ながら既に筆者は各チームの2008年マシンを観察済みであって後出しジャンケンの様な作業となってしまったが、
来季から車輌規定が大きく変更される為、現行車輌規定の最終モデルの記念としてデザインした。

ダウンフォースやリフトを発生するパーツは青、
気流を横方向へ誘導するパーツは紫、
翼端板の役割を果たすパーツはオレンジ、
サスペンションのピロボールは黄色 (ドライブシャフト含む)、
ドライバーの頭部を保護するプロテクターはピンク、
その他の部分は水色で着色した。

それでは、画面のスクロールバーで上下左右へスクロールしてご覧ください。
(空力デザインの説明文はこの図の下にあります。)








 右の方もちゃんと観てくださいね(笑)。スクロール






フロントウイングのアッパーエレメントは、後流制御用ではなく、ダウンフォース発生型とした。
このコンセプトは、リヤウイングへの気流進路制御はフロントウイング以外の区間で行い、(図の青い線で示す。)
アッパーエレメントで僅かだがフロントのダウンフォースを稼ぐ(図の赤い線で示す)という、現在のF1とは逆の考え方。



ノーズ・ホールの手法は今年からフェラーリが採用しているが、
フェラーリよりも筆者の方が3年程先に本サイト上で公開している。

ノーズ・ホールのアイデアの作用は、フロントウイング上側の高圧流をノーズの中の通路へ流し、
モノコック下側の気流の状態を阻害させない様にする為。
ノーズ・ホール式とすると、フロントウイング上側の高圧流がモノコック下面に当たる事を解消できる為、
ノーズ先端の位置を高くする事が出来る。

ノーズ・ホール式とすると前方衝撃吸収性能が低下するが、
一方で、ノーズ先端が低い物よりも、ノーズ先端が高い物の方が衝撃吸収性能に優れている。

モノコック下のダミープレートは、ウエイトを内包する為に厚くした。



フロントサスは現F1マシンのスタンダードであるゼロキール式とした。

ゼロキール式とするとロワアームの取り付け高さが上がってしまう為、
ノーマルな設計では、プッシュロッドのアップライト側取り付け位置が高くなってしまい、
フロントサスの作動性が悪くなってしまう。

それを解決する筆者の以前から考えてあるアイデアを今回のデザインで用いた。
それは、プッシュロッドのアップライト側取り付け位置を、最もフロントホイールの内側の下側に設置し、
これによってモノコックへ向けてのプッシュロッド立ち上げ角度を縦に近づけ、
ロワアームは前方へ湾曲させて、プッシュロッドと干渉しない様に設計した。

これによりロワアームの剛性は低下するが、フロントサスの作動性は向上する。

モノコック側のタイロッドとプッシュロッド取り付け部分には、小さなカウルを着けて気流を乱さない様にした。



(下から見た
 ロワアームと
 プッシュロッド。)



サイド ディフレクターの底面プレートの後縁は、向かわせたい気流進路に合わせて直角になる様、ギサギサの形状とした。
こうした理由は、気流は物体に沿って流れる性質がある為。

サイド ディフレクター上縁もフェラーリに習ってギザギザの形状としたが、
これはサイド ディフレクター裏側へ巻き込む気流進路を明確な状態にする為。

サイドポッド両脇の前方のサイドプレートは、前輪からの気流進路を考慮し、ややカーブさせた。
これはバックミラーの支持も兼ねている。
尚、ルノーも同様の緩くカーブした形状としているが、カーブさせるデザインは筆者の方が先に考案している。
それは2005年にホンダが初めてサイドプレートを登場させた時に、それが直線の板だった為に疑問に感じた時である。





サイドポッド上面は、内側と外側で段差をつける手法とした為、チムニーフィンは着用していない。

サイドポッド上面の内側を低くした理由は、リヤウイングへ少しでも多くの気流を供給する為。
外側を高くした理由は、前輪の巻き起こした乱流をサイドポッドで絞る事で整流する為。

ラジエーター排熱量の調整は、全てシャーク ルーバー スリットの数と、排気管チムニーのサイズ調整で行う。
純粋にラジエーターチムニーで排熱を行うと、排熱効率が高く、調整度も簡単だが、しかしそれは純粋な空気抵抗となってしまう。
その為、ラジエーターチムニーは使用せずに、排熱調整エリアは全て空力活用できる設計とした。
サイドポッド上面にシャーク ルーバー スリットを開ける事で、
ラジエーターコアを通過して速度エネルギーが低下した遅い熱気がサイドポッド上面にまとわり着き、
これがサイドポッド上面の圧力を多少上昇させ、ダウンフォース増加に寄与する。

後輪手前の縦のベーンは間隙フラップ式として気流を剥離させない様にした。
このベーンが描くRは、その上側のフェアリングフィンの横方向カーブとシンクロさせた形状として、
フェアリングフィン下側の吸い上げ機能に支障をきたさない様にした。



サイドプロテクターは、気流を左右へ分ける形状として、上面でリフトを発生させない様にした。

インダクションポッドのミッドウイングについては、
「オンボードカメラの悪影響を改善するアイディア」のページを参照。

ミッションや油圧系統のオイルクーラーは、フェラーリにそのまま習う考え方とした。
そのオイルクーラーはエンジン・エアボックスの後ろに配置し、
インダクションポッドからの吸気を分けて貰い冷却、そのままリヤサス・ユニット上側を通り、後方へ向けて排熱する。



リヤウイング翼端板のアッパーウイング上側にスリットを切ってある理由は、
(青い線で示す)スリットからウイング上面の高圧流を少し排出し、
(緑の線で示す)ウイング両端が作り出す翼端渦が、下方へ巻き込む量を少しでも防ぐ為。
このアイデアは2004年にトヨタが初めて使い出した手法。

アッパーウイング後方の翼端板を切り欠いている理由は、(赤い線で示す)
アッパーウイング下面の気流を切り欠き部分から外側へ排出し、ダウンフォース向上に寄与する為。
この切り欠き部分では、(右下図 緑色で示す)アッパーウイングが作り出す激しい翼端渦が外側へ向けて押し出されているので、
この為に見えない空間が生まれ、この切り欠き部分から外側へアッパーウイング下面の気流を排出する事が出来る。



リヤウイングのロワウイングは、前後方向へカーブさせた。
車体中心線から左右へ75mmまで、計・幅150mmの区間はボディワークの設置が許されるので、
この部分でロワウイングを後方へ高く延長し、センター ディフューザー内からの気流吸い込みを促進させた。(黄色い線で示す)

尚、リヤ・クラッシャブル ストラクチャー バーの上面は三角断面として、
センター ディフューザーから排出される気流を、リヤ・クラッシャブル ストラクチャー バーの上側へ誘導させた。
これによりロワウイング中央部もウイングとして機能する。

そしてロワウイング左右の区間は、後方へとカーブさせ、翼断面もキャンバー角のついた形状とし、通常のウイングとして機能する様にした。



サイド ディフューザー内側の上にある三角形のトンネルについては、
「サイドディフューザー上側の吸い込みトンネル」のページを参照。









このページの最新更新日: 2008. 9.11
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