[ English language ]

メルセデス W08  text & illustration by tw (2017. 2.23木〜)

2017年 2月23日、メルセデスのニューマシン、「W08」が公開された。
この「W08」の写真は、F1-Gate.com 等を参照。
まだ見られる概観が限定的だが、以下、少しづつ筆者の私見を記していこう。



ノーズ先端は全体が低いままで、中央にコブはない昨年と同じタイプの様だ。
メルセデスの低いノーズに関しては2015年から筆者の疑問点で、
これでどうやって車体下面で発生するダウンフォースを確保できているのか非常にミステリーだ。

ノーズ上面には大きめの開口部のSダクト式ノーズホールが開いており、ノーズ下の気流を活性化している。

フロントサスペンションはロワアームを高くする為に、前側アッパーアームはノーズ上面付近まで高くされた。
Sダクトとハイマウント・フロントウィッシュボーンのパッケージはフロント下流を重視するパッケージだが、
それなのに何故ノーズを高くする工夫が無いのだろう?

今年はどこのチームもノーズ脇のカメラをハイマウントにしないが、新しいテクニカルレギュレーションで制限されたのかもしれない。

テスト用なのか、ノーズ上のピトー菅はセンサーが3本ある。



サイドディフレクターは背が高く、上縁が3段くらいに別けてギザギザの段となっている。
ディフレクター面積は全体的に広く、新レギュレーションを最大に活用しようとしている様子が判る。

モノコック両端にはブーメランの様な形状のカナードが着いて、これが目立つが、
筆者の見解では、上の方のカナードは恐らく“オマケ”だ。
空力的に真の狙いは下の方で、上のカナードを真下へ投影した以上の面積のボーダープレートがある筈だ。
(でないと、フラットボトム規定をクリヤできない。)
この部分で車体下方へ流れるエアフローに意欲的に手を入れている筈だ。

今年もリヤビューミラーの手前に縦のカナードが立っていて、これも下方にボーダープレートがある事を示している。

サイドポッド手前のポッドウイングは両端の面積が広い。
このポッドウイングの手前に、更にもう2枚づつ、おそらく上半分だけ垂直のフェンスが立っている。
先日のルノーといい、ここが今年の空力のキモの一つとなっているかもしれない。

ここが上半分だけ垂直のフェンスと筆者が推測する理由は、サイドディフレクターと干渉する為だ。
サイドディフレクターは気流を外側へ向けるが、その際に気流がディフレクターの上下に巻き込む。
これがターニングベーンの効果だが、
上へ巻き込んだ気流を、途中から、上半分だけ垂直のフェンス内側へ当てる事で、
ここで気流が絞って、その後ろにあるサイドポッド側面へ速い流れを供給していると考えられる。

サイドポッドの全高は今年も低めだが、特徴的なのはコークボトルラインの上側が2段絞りな事だ。
これはちょっと1989年のマクラーレンを現代風にデザインし直した様なイメージだ。
後部へ速い流れを維持させたい場合、絞り込むラインは1本描きの方が効率が優れると思うが、
W08ではそれは下部のコークボトルラインで行っていて、上部では2段絞りとして何らかしら気圧の調整をしている模様だ。

サイドポッド後部はリヤサスペンションのアッパーアームよりもやや低く、今年もリヤウイングの効率を重視している。
これで排熱できるのかと思う程コークボトルは狭く絞られているが、
これはパワーユニットと排気管の取り回しがコンパクトでなければ実現できないだろう。
復帰して苦戦したホンダは当初、サイズゼロ・コンセプトを謳っていたが、
本来重視するべきはメルセデスの様にコークボトルのコンパクト化に寄与する事ではないのか?

後輪手前のアンダープレートには、昨年流行したスリットがたくさん切られていて、
車体下へ入り込む気流に何らかのアクションを行っている。



サイドプロテクターとインダクションポッドは冒険をしておらず保守的だ。
今年もインダクションポッドのエアインテークは下部が後退している形状。
現時点でシャークフィンは装着していない。

リヤサスペンションはプルロッドで、アッパーアームの前後スパンは短い。
これはサイドポッド上面後部の気流を阻害しないようにしているのだと考えられる。
サイドポッド後部を低める場合、もしリヤの前側アッパーアームを長くすると、
どうしてもリヤウイングへの気流を阻害する構造となる。

リヤウイングは端が高くなっている3D形状で、翼端渦の発生を軽減している。
しかし何故、下流を重視したスワンネックのステーとしないのだろう?

ドライバーはルイス・ハミルトンと、新加入のバルテリ・ボッタスのコンビだ。

(このページのここまでの最新更新日:2017. 2.23木 PM 10:52

(2017/ 2/23木 Pm 11:20更新)

F1通信に大きい写真が数枚、掲載されている。
リヤビューミラーはカットスポイラー着きで、ミラー後ろのウエイク(空気の塊)を切り離すデザインとなっている事が確認できた。
このアイディアは、筆者も2002年2月にスケッチしている。


(2017/ 2/24金 Am 1:44更新)

上でサイドポッドの全高が低めと書いてしまったが、正面からの写真を入手したら全高は高い事が判明した。
このエリアでレギュレーションの最大高である、リファレンスプレーンから600mm近くありそうだ。
低めなのはサイドポッドのエアインテーク開口部の上縁で、その後、上方へ気流を絞り上げている。
サイドポッド上面前端を覆うポッドウイングは前後長が短く、ここで速い流れが大気へ作用する為リフトが強めかもしれない。

サイドポッドのエアインテーク開口面積は極端に小さく、この内部通風量ならW08の異様なまでのリヤエンドの小ささは納得できる。
そしてこの開口面積から、パワーユニットがかなりの高温で運転している事が窺える。
マシンの走行抵抗の内、空気抵抗はおよそ速度の二乗で増加する為、ラジエーターを小型にした方が高速域では有利となる場合がある。
ここで問題となるのは、シンプルにパワーユニットが故障しないかどうかだ。より冷却した方が信頼性に優れるのは云うまでもない。
つまり高温で運転できるパワーユニット開発の成果は、マシンの空力性能にダイレクトに影響するのだ。

インダクションポッド脇のカメラは、昨年の冬の様に謎の分厚い仕様を装着している。

排気管は、内部の中央に縦の構造物が見える。これは排気管が割れるのを防止する板かもしれないが、
以前のトロロッソの様にリヤウイングステーが排気管内を貫通している可能性もある。

リヤサスペンションのトラックロッドは、ドライブシャフトと同じかやや高い位置で、前後に少し長めの翼断面となっている。
レギュレーションが変わっていなければ、縦横比は、前後長 3.5:厚さ1 までだ。
(このチームの前身を遡ると、ブラウンGP、ホンダ、BAR、ティレルとなるが、
ティレル時代の1996年頃に、前後サスアームを薄いプレートで構成して空力効果を狙った為、
しばらくしてサスアームの断面にこの3.5:1以内の比率が定められた。)

後輪のアップライトには今年も大量のフラップが備えられている。
それが跳ね上げる気流との干渉を防ぐ為にも、リヤウイングの翼端板は縦にカーブしていると理解できる。

ディフューザーはレギュレーションで取り付け可能な範囲に、大きめのガーニーリップを装着している。
中央部は湾曲して低まっているので、ここは2枚構成のガーニーを取り付けている様だ。
メインのアップスイープ部分ではどうやら1枚で、外側へ反るRの強い側面では2枚のガーニーの様だ。

リヤウイングの翼端板の後部は、後輪の後ろ側へ少しでも気流を向けようという小さなカーブが見える。
DRS作動装置は小型で空気抵抗が少なそうだ。

(このページのここまでの最新更新日:2017. 2.24金

(2017/ 2/25土 更新)

F1通信にW08の詳細が判る写真が追加された。

なんと、フロントサスのアッパーアームが、前輪ホイールの頂点よりも高い!
これはアップライトから斜め上方へ、カーブした接続パーツを使ってアッパーアームと接続している。
この様な構造は、近年のリヤサスペンションで行われているが、フロントでは初だろう。
これでよりフロントウィッシュボーンをハイマウント化でき、空力寄与の大きい車体下部の流れを改善している。

フロントノーズ側面のカメラは、ノーズ側面に直接は接していない事が確認できた。
カメラを少しだけ横方へと伸ばすパーツ(前後2つのステー。中間は穴状)で支えてあって、
これでこの部分での境界層の成長を従来よりも軽減し、後方への気流の運動エネルギーを改善している。

モノコック側面の中段位置には、小さなカナードが見えた。
これは下向きに見えるので、車体下方への気流の供給を助けている筈だ。

サイドポッド側面下部は、どうやら狭いままで、マクラーレンと同じ考え方だ。(筆者は現時点では懐疑的だ。)

リヤウイング手前の薄いT字ウイングについては、フェラーリSF70Hのページを参照

(このページのここまでの最新更新日:2017. 2.25土

(2017/ 3/17金 更新)

バルセロナテストでは、エンジンカバーのシャークフィンをチムニー(煙突)とした新しいアイディアを試していた。
これはリヤウイングよりも高いエリアへ排熱するので、排熱流が後流を乱しても空力性能にあまり害を及ぼさないのが特徴だ。

この部分をチムニーとするのは新しい発想だが、結果的に同じ形状の物は1995年のマクラーレンが採用していた。
それは当時、エンジン吸気のラム圧を制限するテクニカルレギュレーションで、
吸気菅の上方に、定められた面積の穴を開けていなければならなかったが、マクラーレンはそれを逆手に取り、
今回のメルセデスW08の様なエンジンカウル形状とした上で、その後部に500mm幅のミッドセンターウイングを装着させた。
ラム圧キャンセル口からは圧力の高い空気が排出され、それがミッドウイングの上面を通過し、僅かながらダウンフォースに寄与したのだ。
空気は圧力の高い所から圧力の低い所へ流れる性質がある為、ミッドウイングが抵抗になり、エンジン吸気に僅かなラム圧を加える作用もあっただろう。

そのミッドウイングと似たエリアに、今年の冬ではTウイングを装着したマシンが数台居たが、最初にTウイングを公開したのはメルセデスだ。
フェラーリはそれよりも半日か1日遅れでTウイングを装着した車体を公開したと思うが、この時間でコピーするのは不可能なので、
フェラーリもメルセデスと同じルールの抜け穴に気付いていたのだろう。

そしてメルセデスはTウイングを2重にした物も試した。
その写真を観ると、フェラーリとは異なりダウンフォース発生型の翼形状に見え、
同じエリアの活用でも、考え方に違いが出たのは面白い。

この冬の合同テストでは、最速タイムでメルセデスはフェラーリに遅れを取った事もあった様だが、
メルセデスはエンジンにトラブルを抱えていて100%の出力モードにはできていなかったという見方もある。
そうであればトラブルを治してしまえば今年もメルセデスがリードするのかもしれないが、
それでも、ここ数年の様に彼等の独走にはならないかもしれない。フェラーリもレッドブルも非常に攻めたマシンを投入しているし、
今年からパワーユニット開発のトークン制が撤廃された事で、パワーユニット開発競争に予測がつきにくいからだ。

(このページのここまでの最新更新日:2017. 3.17金

(2017/ 3/31金 更新)

これは筆者による、昨年までのノーマルなサスアームと、今季のハイマウントウィッシュボーンの比較図だ。
下の黄色いエリアが、重要な車体下の空力に寄与する。




黄色いエリアの大きさから、今季のハイマウントウィッシュボーンがいかに効果的かが判る。
実際にはタイヤの側では、回転で巻き起こされる乱流があるが、それはディフレクターで綺麗に処理される。

しかしハイマウントウィッシュボーンは、サスペンションの性能面ではそれなりの弊害が起きている。

まず、キングピン(上下ウィッシュボーンのタイヤ側ピボットを繋いだ線)は、タイヤの設置中心に近く設計しなければならない。
そうでないとキングピンオフセットが大きくなり、操舵力が増加(パワステの燃費が悪化)し、直進性にも悪影響を及ぼす。
その為、W08ではキングピンオフセットが大きくならない様にキングピン傾斜角が大きくされている筈だ。

キングピン傾斜角が大きい場合、操舵時に外側タイヤにポジティブキャンバーがつく為、
W08は横から見て、キャスター角が大きくされていると推測できる。(キャスター角が大きい程、操舵時にネガティブキャンバーがつく。)

そして図から判る様に、ウィッシュボーンが短い分、ストローク時のトレッド変化は大きくなる。

この様に、ハイマウントウィシュボーンは空力には非常にメリットがあるが、機械的な弊害は多い。
単純に重心が高くなってしまう事も忘れてはならない。

それでもハイマウントウィッシュボーンが採用されたのは、ただひとえに現代F1では空力性能が重要だからだ。

(このページのここまでの最終更新日:2017. 3.31金

(2017/ 5/12更新)

今回のスペインGP、バルセロナサーキットでは空力性能がラップタイムに寄与する度合いが非常に大きいので、
例年各チームはここに空力のアップデートを持ち込む。
フェラーリとのタイトル争いが接近しているメルセデスも、今回空力を大幅アップデートした。

まずノーズコーンは、モノコックとの取り付け位置のすぐ手前から少し幅が狭くされた。
そして幅を狭くした事で生まれたノーズ横のスペースに、カールした大型フィンを装着した。
これはフロントウイングフラップ内側で意図的に発生させている縦渦を、
後方の車体下部へ向けてより都合の良い形で利用しようという工夫だ。

このカールしたフィンはモノコック下の、更に立体形状となったターニングベーンと一体となっている様に見える。
現在見られた写真では、残念ながらまだこの新型ターニングベーンの詳細な構造は判らないが、
形状の凝り様から、CFDや風洞で綿密に練られた跡が見られる。

今回のカールした大型フィンと立体ターニングベーンの導入で、
フロントセクションの気流進路が以前とはだいぶラジカルに異なっているだろう。

その直後にはM字型の高圧フラップが備えられ、車体下方へ気流を向けている。
(このフラップの仕組みはレッドブルRB12のページを参照。)


モノコックサイドのエリアでは、3連ポッドウイングがリファインされ、サイドディフレクターも手が入れられた様だ。

3連ポッドウイングはそれ程ラジカルではないが従来よりもより洗練された形状だ。
具体的には、サイドディフレクター下部が車体外側へ気流を跳ね飛ばす方向にも作用するので、
ポッドウイングは、下部でそれに対応したカーブを描き、上部は直線的に後方へ気流を向ける、これを更に積極的に行うようになった。
上部が直線的なのは、前輪の回転が巻き起こす乱流を「切って」後方へ整えて流す為だ。
ポッドウイングはセオリー通り、外面を低圧に、内側を高圧にする翼断面となっている。

ポッドウイングは3枚構成だが、2枚目は下端がカールして後方へ伸びている。
これはサイドディフレクターが気流を上下にも別ける為、この上側へ巻き込んだ流れを、
意図した気流進路でもって後方へ流そうという配慮が見える。
ここはアンダーパネル端の流れ方に影響するので、このポッドウイング2枚目の形状調整は車体底面の流れを調整する事になる。

リヤウイングのモンキーシートも新しくなったが、これは単純なマイナーアップデートで、ラジカルな試みは見られない。

今回のアップデートで、走行中のレーキ角がどうされているかにも注目したい。
レーキ角とは、前後の地上高に差をつけて車体を前傾させている角度の事だ。
メルセデスは中国GPではより水平向きとして、他チームが角度を増す傾向にあるのに逆のアプローチとしてきていた。
フラットボトム規定下では、車体下面の空力コンセプトとレーキ角の考え方はセットなのだ。

尚メルセデスは、昨年ロズベルグ車で使用していたコクピット開口部のノコギリ型の形状ウインドシールドを、
今年はハミルトンとボッタス車でも使用している。

(このページのここまでの最新更新日:2017. 5.12金

(2017/ 6/01木〜6/02金 更新)

近年のメルセデスF1のサイドポッド後端は低い。これが何を意味するかを以下記述する。
早い話が、ボディワーク上面が凹の形状だと、そこで流れの圧力が増すのだ。
上面が、凹んだ翼と、比較的平らな翼を、下に記す。青い空間が低圧域で、赤い空間が高圧域だ。


赤い高圧域では、気流は遅く流れている青い低圧域では、気流は速く流れている
つまり、流速が低下すれば圧力は上昇し、流速が高まれ圧力は低下する。 両者は交換、トレードオフとなるのだ。

この様に、翼の下面の曲率が同じ様な形状であっても、上面の形状の差異によって、気流進路と空力性能は大きく変わる。
上面が凹形状だと、上面の高い圧力がダウンフォースにプラスするのだ。
ダウンフォースは主に、車体の構造物(ウイング等)の下面の低圧上面の高圧の和から成る。

では、F1マシンにおいて、サイドポッド上面が後斜していないストレートな形状と、後方へ低く落ち込む形状の流れの違いを考察してみよう。


両者は大きく異なっている。
後者(図右)はサイドポッド上面が後斜する事で、流速が低下し、圧力を増している。(赤い空間)
気流は、圧力の高い所から低い所へ流れ込む性質がある為、後者(右図)の方がリヤウイングへ向けて気流が流れ込み易い。

しかし、以前から、とある元F1メカニックで現ジャーナリストのお方が、
「後方に低く落とし込んだサイドポッドが、リヤウイングへ高速の気流を供給する」
と物理的に完全なデタラメを商業F1紙面にて綴っておられたが、これは全くの嘘であるのでご注意を。

上図の通り、右図のリヤウイングへの気流は、
「サイドポッド上面の遅い流れがリヤウイングへ向かい、リアウイング下面に吸い込まれ加速しながらリヤウイング下面を通過する」のであって、
高速の気流をリヤウイングへ提供する事は物理的にどうあってもありえないし、単純に原理的に不可能だ。
上図の気流線・圧力図の通り、サイドポッド上面から供給する気流は、高速ではない! 事実は、「サイドポッド上面の流速は遅い」のだ!!!

筆者はどんな理由であれ、科学的に「物理的な嘘」をつく事を決して許しはしないし、
事実上の国内トップジャーナリストからの援護射撃で、「彼は頼まれて書いています」と反論されようとも、
紙面で物理的な嘘を綴っている以上、筆者はその嘘を許しはしないし、許される理由がどこにあるのだ??? それならば彼等には説明してほしい。

そういう訳で、筆者はその雑誌の不買運動をしているのでその記事の参照データは手元には無い。

では下図にて、低く落とし込むサイドポッドが実際のF1マシンではどうなるか、やや複雑だが概念図を描いてみよう。



この様に、少し複雑だが論理的で美しいテクニックで現代F1マシンの空力は性能を発揮している。
空気の流れは、圧力の高い所から低い所へと向かう。この圧力分布がテクニックだ。
要は、最も空力性能に寄与するディフューザー下面の気流引き抜き量を増加させる事に神経を注いでいる。
その為の圧力分布がこれ(上図)だ。
サイドポッド上面を後斜する事で、いくつものメリットを生み出している。(それはいくつかを考えて数えてみて欲しい。)

尚、上図ではサイドポッド上面の最初の絞りでリフトを発生してしまっているが、今季のフェラーリはそれが無い形状に改良されている

では、この低く落とし込んだサイドポッド上面が、何のデメリットも無いかと云えば、ある。
サイドポッド後端が低いと云う事は、それは幅が広くされていると云う事だ。
何故なら、リヤエンドにて各・熱交換機の排熱を抜く必要があるからだ。

幅の広いサイドポッド後端は、コークボトルテールの空力性能を軽減してしまう。
つまり、低く幅の広いサイドポッドは、リヤウイングとの圧力関係のメリットと引き換えに、コークボトルの空力性能を削ってしまう事を意味する。
ここに各チームのCFDや風洞からの損得勘定が現れている。誰が正解だったのか? それはコース上のパフォーマンスが決めるだろう。

(このページのここまでの最新更新日:2017. 6.02金


(2017/12/16土 更新)

タイトル獲得おめでとうございます。
今年のメルセデスW08は、筆者にとって非常に奇妙なマシンだった。
ホイールベースが長く、レーキ角(車体の前傾姿勢)が非常に浅い。彼等は何故そうしていたのか?

もの凄く簡単に云ってしまうと、W08は結果として、低速コーナーが多いコースでは苦戦し、
高速コーナーとストレートが長いコースでは優秀である傾向があったと思う。
これは短絡的に考えると、パワーユニットの強大な出力と、ホイールベースの長さが、この結果を結論づけてしまっている様に見えるが、
F1GPでは90年代半ば辺りから、車輌のトータルパッケージがマシンの評価=性能として捉えられる様になっている。
筆者が引っかかってどうしようもないポイントは、W08のレーキ角の浅さだ。

過去に筆者が90年代にプレイしていた、ソニーのプレイステーション(1)の「童夢の野望」というマシン設計・鈴鹿タイムアタックゲームでは、
グッドイヤーのスリックタイヤで、筆者の設計では、ホイールベースは2850mm程、
ライドハイトは、フロント: 20mm/リヤ: 40mm が最速のパッケージであった。

現代のF1誌の情報では、各マシンの平均的なライドハイトは、フロント: 1.5mm/リヤ: 6.0mm 付近であるらしい(?)。
このライドハイト(乗っている高さ)は、リファレンス プレーンの延長線上で測定してあるのだろう。

今(2017)年はフラットボトム規定の範囲が、フロントから後方への義務距離が90mmも後退されたので、フロントのハイトは下げ易くなっている。
これによりフロントウイングは路面へ接近し、フロントウイングのグランドエフェクト効果を高める。
しかし本件で筆者が気になる要素はレーキ角であって、ライドハイト自体ではない。

今年のタイトルを獲得したメルセデスは、そのマシンの優秀さ上で勝ち取ったものだと筆者は理解しているが、
2018年シーズンの他チームのレーキ角がどうなるか、非常に気になる昨今である。

(このページの最終更新日:2017.12.16土
[Site TOP] [ティレル] [BAR] [ホンダ] [ブラウン] [メルセデス]